■打倒ヘラクレス会議!?/鈴木浩之(埼玉県久喜市)
- ●「うみへび座は全体をたどるのはたいへんだけれど、頭の辺りは明るい星も多くて分かりやすいな」「神話に関連づけた写真を撮れないだろうか」などと考えているうちに思いついた構図です。神話の中でヘラクレスに倒された獅子、蟹、うみへび(ヒドラ)がどうやってヘラクレスを倒そうか頭をよせて相談している、という勝手なイメージでタイトルを付けました。スライドの原板も送りましたが、こちらは星座線を引くためにデジタル化したプリントです。光害によるかぶりも少し補正しました。星座線を入れたほうが分かりやすいと思います。
ニッコール35mmF2.8広角レンズをF4に絞る ニコンNewFM2 ビクセンSP赤道儀にて恒星時追尾 ハリソンディフュージョンフィルターD3 コダックエクタクロームE200を+1増感現像 2001年1月2日01時52分から30分露光 茨城県里美村にて
★ギリシャ神話の英雄ヘラクレスに倒され女神ヘラによって星座とされた、ネメアの森に住む化け獅子、九頭をもつ蛇・ヒドラ、レルネ沼のアミモーネの泉にすむお化けガニ・カルキノスの3匹が天上でリベンジを誓い集まっている様子をイメージした作品で、着眼点がとても面白いですね。星座写真はとかく決まりきった構図となりがちですが、こういったアプローチは天体写真の世界観を広げることにも繋がります。鈴木さんは毎回こういった新しい試みに挑戦しつづけてくれる一人で、これからも楽しみにしています。
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■デジタルカメラによる星雲星団/野田 司(岩手県九戸郡)
- ●自作屈折はケンコーのACクローズアップレンズNo.3を利用しています。これをコリメート撮影で使っていて、合成焦点距離は35mm判換算で340mm相当ですが、円形にケラレますので大体500mm相当の写野です。このデジカメは裏モードで60秒までの露出ができます。合成F2でISO500相当の感度ですのでコンポジット合成することでかなり淡い部分まで写すことができます。
口径44mm焦点距離330mm自作屈折望遠鏡とビクセンOr32mmでコリメート撮影 デジタルカメラQV3000EX(7mmF2) ビクセンSP赤道儀にて恒星時追尾 キヤノンBJF850にてプリント 2001年1月13日〜20日 60秒露出を8〜12枚コンポジット合成 岩手県大野村にて
★秋から冬にかけての大型の星雲星団を自作の小型屈折望遠鏡とデジタルカメラにより捉えています。これまでデジタルカメラといえば光量の豊富な月や惑星などが主な対象とされてきましたが、この作品を見る限り長時間露出できるデジタルカメラさえ用意できれば星雲星団も十分撮影範囲となりそうですね。ただこの作品でもM31の外周腕や、バラ星雲のように淡い対象はSN比があがらず中央集光の影響を受け不自然さが否めません。先駆者としてさらなるノウハウの蓄積を期待しています。
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■昇るうしかい座/井上恵嗣(奈良県奈良市)
- ●いつもの撮影地のそばにある木々のシルエットがやさしくチャーミングなので季節ごとの星景写真を撮っています。
SMCペンタックス55mmF4をF5.6に絞る ペンタックス67 固定撮影 コダックエクタクロームE100Sを+1増感現像 フジピクトロスタットデジタル400にてプリント 2000年12月23日04時45分から60分露光 奈良県曽爾高原にて
★明け方の東天に昇る横倒しになったうしかい座の日周運動を美しい樹形のシルエットを前景に切り取った美しい作品です。視点を下げあおりぎみとした構図も効果的でした。明け方に昇る春の星座と澄み切った透明感のある夜空の発色は冬を感じさせます。季節ごとの姿を見てみたくなるような作品です。
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■雪原に舞う北極光/望月和代(神奈川県相模原市)
- ●星を観る会・会員10名でカナダ・イエローナイフへ行きました。その旅行はドラマチックに幕を閉じました。悪天候の日が続き、最終日の夜、やっと待ちに待ったオーロラが・・・。小さい頃から見たいと夢見たオーロラは想像以上のすごさでした。しし座、アルクトゥールス、ミザールも饗宴しています。
タムロン24mmF2.5広角レンズ開放 オリンパスOM1 固定撮影 フジカラースペリア800ズームマスター 2001年1月25日22時25分から30秒露光 カナダ・イエロー・ナイフにて
★昨年から今年にかけては、周期約11年という太陽活動が活発な時期にあたり、それにともなってオーロラの活動も活発となっているようです。読者の皆さんからもオーロラを撮影した作品が多数送られてきましたので、そのなかから何点か紹介しましょう。オーロラが頻繁に見られる地域は北半球ではグリーンランド北西部付近の磁極をとりまくオーロラ帯で出現頻度も高く活動も活発です。ここで紹介した作品もすべてカナダ北部で撮影されており、大きく複雑なうねりを持ったカーテン状のオーロラからその活動の活発ぶりが伺えるようです。オーロラは太陽風が磁力線にそって地球に接近しその一部が大気の分子に衝突するときに勃起され発光するもので、100km上空ほどでおこる大気現象です。作品では酸素分子が発する黄緑色が強く出ていますが、時には赤や青、白などカラフルなオーロラが見られることもあります。
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■可視光の太陽とHα光の太陽/高橋篤司(京都府相楽郡)
- ●昨年の11月からデジタルカメラを使用してHα画像を撮影してきました。しかしデジカメゆえにレンジが足りず、ノイジーな画像だったことと望遠鏡・カメラ・アイピースの三者の相性で、なかなか周辺まで良質な画像が得られません。冷却CCDカメラで直焦点撮影すれば即解決の問題ですが、あえてデジタルカメラでチャレンジし続けています。
まず今回は、ノイジーな画像の改善を模索してみました。レンジが足らないのだからコンポジットする方法が考えられます。しかしHα光の太陽面がどの位の時間、同じ模様を留めているのかまったく解りません。とりあえず4分以内と自分で時間を決めて、ひたすらコマを撮り続けます。6枚を超えたあたりで確実にノイズが低減しています。焦点距離にもよりますが、現在のシステムでは4分くらいだと、特に模様のズレも感じられなかったので、しばらくこの方法で撮影を続けてみたいと思います。
可視光:タカハシFC76(口径76mm焦点距離600mm屈折望遠鏡) ミードSP26mmによるコリメート撮影 D4+ND2+ND4フィルター使用 2001年1月30日12時00分から1/934秒露光(F8.9) Hα光:ヘリオス1(口径??mm焦点距離400mm屈折望遠鏡) Or18mmによるコリメート撮影 12時00分から1/72秒露光(F3.5) 共通データ: ニコン・クールピクス990 ロスマンディZ赤道儀にて恒星時追尾 エプソンPM820Cにてプリント 自宅にて
★先月号に引き続き同じ題材の作品ですが、今回の作品はコンポジット合成によりノイズの低減を狙ったものです。可視光の作品はディテール描写にやや不満が残りますが、Hα光の作品では彩層の微細構造や羊斑、ダークフィラメントなど見事な描写です。2枚組みにしたことで可視光とHα光で見た太陽面の違いも良く分かります。太陽面の変化はダイナミックで、粒状斑や小規模なフレアやサージは数分の間で変化します。拡大撮影ではコンポジットに使用する画像を短時間の間に得られるよう工夫が必要かもしれませんね。
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