【特集】土星(2024~2025年)

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2024年から2025年の土星は9月~1月ごろに観察シーズンを迎えます。明るいので街中でも簡単に見つけられます。

天体望遠鏡で観察すると細い環が見えます。衛星タイタンも探してみましょう。

土星を見つけよう

明るい黄白色の星

2024年の土星は「みずがめ座」の西端あたりにあります。明るさは約1等級で、街中でも肉眼で見ることができます。「南の空に見える、クリーム色の明るい星」と覚えておけばわかりやすいでしょう。やや離れたところに、みなみのうお座の1等星フォーマルハウトも見えますが、色や高さ(フォーマルハウトは白くて低い)で見分けられます。

2024年10月中旬 22時の星図

2024年10月中旬 22時の空(東京)。画像クリックで表示拡大(ステラナビゲータで星図作成)。
(2024年6月(2時)7月(1時)8月(0時)9月(23時)10月(22時)11月(21時)

土星に関する現象カレンダー

2024年6月~2025年2月ごろに起こる、土星と月との接近などは、以下のとおりです。月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。

星図(10月14日、名と土星が接近)

10月14日の夕方から15日の未明、月齢12の月と土星が接近する(» 解説)。画像クリックで表示拡大(ステラナビゲータLiteで星図作成)。

日付 現象備考
10月14日 月(月齢12)と接近
» 解説
夕方~翌15日未明/南アフリカ、インドなどで土星食(日本時間15日3時ごろ)
11月11日 月(月齢10)と接近
» 解説
夕方~深夜/中央アメリカなどで土星食(日本時間11時ごろ)
11月16日 留(りゅう)この日を境に、天球上を西→東に動く(順行する)ようになる
12月 8日 東矩(とうく)太陽から90度東に離れる(日の入りのころ南に見え、深夜に沈む)
日付は赤道座標系(黄道座標系では5日)
12月 8日 月(月齢7)と超大接近夕方~深夜/東南アジア、日本などで下記の土星食(日本時間18時ごろ)
12月 8日 土星食東京:潜入開始18時19分
1月 4日 月(月齢4/5)と接近夕方~宵/ヨーロッパなどで土星食(日本時間5日2時ごろ)
1月中旬
~下旬
金星と接近夕方~宵/最接近18日ごろ
2月 1日 土星食札幌:潜入開始13時00分
2月 1日 細い月(月齢3)と接近夕方~宵/中国、日本などで上記の土星食(日本時間14時ごろ)
2月下旬 水星と大接近夕方/最接近25日ごろ
3月13日 太陽と同じ方向に来る(見えない)
日付は赤道座標系(黄道座標系では12日)
3月24日 環の消失地球から見て環の傾きが0になる
(過去の現象)
6月12日 西矩(せいく)太陽から90度西に離れる(深夜に昇り、日の出のころ南に見える)
日付は赤道座標系(黄道座標系では9日)
6月25日 環の傾きが2024年中で最小惑星面緯度=2.39度
6月28日 月(月齢21)と大接近
» 解説
未明~明け方
北アメリカなどで土星食(日本時間0時ごろ)
7月 1日 留(りゅう)この日を境に、天球上を東→西に動く(逆行する)ようになる
7月24日 月(月齢19)と大接近
» 解説
深夜~翌25日明け方/インド・南アジア・東アジアなどで下記の土星食(日本時間25日6時ごろ)
7月25日 土星食
» 解説
東京:潜入開始6時30分
8月21日 月(月齢16)と並ぶ未明~明け方
南アメリカ、ヨーロッパなどで土星食(日本時間12時ごろ)
8月21日 月(月齢17)と並ぶ宵~深夜
9月 9日 衝(しょう)
» 解説
太陽の反対に来る(日の入りのころ昇り、深夜に南に見え、日の出のころ沈む)
日付は赤道座標系(黄道座標系では8日)
9月17日 月(月齢14/15)と大接近
» 解説
夕方~翌18日明け方/ハワイ、北アメリカなどで土星食(日本時間19時ごろ)

土星は2024年2月中旬以降、太陽に近づいて見えにくくなり、3月中旬に合(太陽と同じ方向になること)を迎えて見えなくなります。明け方の東の空に見えるようになるのは5月上旬ごろからです。

モバイルアプリを活用

星空ナビ

無料モバイルアプリ「星空ナビ」は、スマートフォンを空にかざすだけで、その先にある天体などの情報を教えてくれます。ナビゲーション機能を使えば土星の方向まで星空ナビが案内します。

近いうちに起こる天文現象のお知らせや最新の天文ニュースも届きます。土星を見るだけでなく、探査や研究のニュースを通じて詳しく知ることでも楽しめます。また、1年間の天文情報をいつでも見られるなどの特典が得られる有料プランもあります。

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iOS/Android用
「星空ナビ」

星空ナビ

iステラ・スマートステラシリーズ

iOS用の「iステラ」「iステラ HD」、アンドロイド用の「スマートステラ」も、端末の向きに連動して星図を表示するので、土星の位置や周りの星の名前などが簡単にわかります。日時を変更して未来の見え方を事前に調べることもできます。

スマートステラでのシミュレーション

スマートステラで土星の見え方をシミュレーション。画像クリックで表示拡大。

木星も見よう

11月ごろからは木星も見やすくなります。惑星ウォッチングを楽しみましょう。

【特集】木星(2024~2025年)

望遠鏡で環を見よう

土星の環を見るためには天体望遠鏡が必要ですが、それほど大口径のものや高い倍率でなくても大丈夫です。双眼鏡でも、手振れを抑えれば「真ん丸ではなく、何となく楕円っぽく見える」ことはわかるでしょう。手持ちの道具があれば、まずそれを土星に向けてみてください。

公開天文台や科学館などで開催される観望会(観察会、観測会)では、大きい望遠鏡で土星を見ることができ、8等級の衛星「タイタン」も見えてきます。お近くのイベント情報は、全国プラネタリウム&公開天文台情報ページ「パオナビ」で検索してみてください。

土星

探査機「カッシーニ」が撮影した土星。表面の縞や極域の六角形の模様、環の中ほどにあるカッシーニの間隙などが鮮明に見える。画像クリックでリリース元ページへ(クレジット:NASA / JPL / Space Science Institute)。

変化する環の見え方

土星は地球と同様に傾いた状態で公転しているため、土星の赤道面上に広がっている環の見え方(見かけ上の太さ)は、年々変化します。2017年5月に土星の北半球が夏至を迎え、土星の北側が最も地球(太陽)の方向に傾いたため、環が太く見えていました。それ以降、環の見え方はどんどん細くなっています。

地球から見た土星の惑星面緯度

地球から見た土星の惑星面緯度(2024年6月~2025年3月)。緯度(の絶対値)が小さいと環の傾きも小さくなる。画像クリックで表示拡大。

2025年の春には地球や太陽から見て環が真横を向くような位置関係となるために、見かけ上土星の環が消えてしまう「環の消失」が起こります。そのため、2024年から2025年にかけては環がわかりづらく、単なる線(土星を貫く串?)のように見えるかもしれません。実際に観察して確かめてみましょう。

また、環が見づらいシーズンは、土星本体の縞模様や暗めの衛星を見たり撮ったりするチャンスでもあります。「環があってこそ土星」ではありますが、環が細いことをメリットとした観察にも挑戦してみてください。

環の見え方の変化(2023~2025年)

2023年から2025年(各年の衝の日)の、環の見え方の変化。画像クリックで表示拡大(北が上)。

環の消失

2025年3月24日には地球から見て土星の環が真横になり、見かけ上「環の消失」が起こる。前後の期間も環が非常に細い。画像クリックで表示拡大(北が上)。

2026年ごろからは土星の南半球が見やすくなるのに伴って再び環が太くなっていきます。そして2032年に、南側の面が一番広く見えるようになります。長期にわたって見え方の変化を追ってみましょう。

環の見え方の変化(1995~2022年)

1995年から2022年までの環の見え方の変化(撮影:mtajimaさん)。画像クリックで表示拡大、撮影者名クリックで天体写真ギャラリーのページへ。1995年に環が消失→2002年に(南側に)傾き最大→2009年に環が消失→2017年に(北側に)傾き最大、という変化がわかる(南が上)。

ステラナビゲータでシミュレーション

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、環の見え方やタイタンをはじめとする衛星の位置などを正確にシミュレーションできます。観測や撮影に便利です。

▶ 試用版はこちら。1か月間無料で機能をお試しいただけます。

土星を撮影してみよう

カラーCMOSカメラを天体望遠鏡に接続して惑星を動画撮影し、その中から写りの良いフレームだけを選んで多数枚コンポジットすると、精緻で滑らかな惑星像を得ることができます。天体画像処理ソフトウェア「ステライメージ」を使うと、動画からのコンポジットはもちろん、カラーバランス調整やディテール強調まで簡単かつ詳細に行えます。画像を「作品」に仕上げてみましょう。

» 天体写真ギャラリー「土星」 【2024年】 【2023年】 【2022年】

惑星を撮影しよう CMOSカメラで動画撮影、ステライメージで処理

「星ナビ」連載記事:

  • 2018年6月号:「CMOSカメラで惑星を撮る 1. 惑星撮影用の望遠鏡とカメラ」
  • 2018年7月号:「CMOSカメラで惑星を撮る 2. 惑星撮影用の準備と実際」
  • 2018年8月号:「CMOSカメラで惑星を撮る 3. 惑星の動画撮影」

「星ナビ」2018年6月号

「星ナビ」2018年7月号

「星ナビ」2018年8月号

オンラインショップ

アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡などを多数取り扱っています。環の見え方を自分の目で確かめてみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズ、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。

天体望遠鏡やグッズはアストロアーツオンラインショップで

土星に関するマメ知識

土星は大きさ(環を含まない、赤道部分の直径)が地球の約9倍ある、木星に次いで太陽系で2番目に大きい巨大ガス惑星です。太陽からおよそ14億km離れており(太陽~地球の約10倍)、30年かけて公転しています。

表面には木星と同様に縞模様が見られます。また、北極域には六角形の不思議な模様が存在しています。

土星最大の特徴といえば「環」でしょう。環は主に、直径数cmから数mの氷の粒が同心円状に集まってできていて、ところどころに隙間が見られます。幅(明瞭な部分)は土星本体の約2.3倍のところまで広がっていますが、厚みは数百mほどしかありません。

環

探査機カッシーニが撮影した土星の環。画像クリックでリリース元ページへ(クレジット:NASA / JPL / Space Science Institute、以下同)。

星ナビ2021年10月号

「星ナビ」2021年10月号で土星の環を8ページ特集。観測や探査の歴史、形成のメカニズムなどについて解説。

衛星

土星には140個以上の衛星が見つかっていて、太陽系の惑星で最多です(2024年6月時点)。そのうちとくに興味深いのは、タイタンとエンケラドスです。

タイタンは土星最大の衛星です。太陽系全体では木星の衛星ガニメデに次ぐ2番目の大きさで、どちらも惑星である水星よりも大きな天体です。メタンの雨が降り、表面に液体のメタンやエタンの川や湖が存在しています。また、窒素を主成分とする厚い大気を持っています。

タイタン

可視光線+赤外線で撮影したタイタン。大気越しにうっすらと地形が見える。

タイタン

近赤外線で撮影したタイタン。大気を通して「Senkyo(仙境)」という地形がとらえられている。

エンケラドスでは、地下から水蒸気が間欠泉のように噴き出している現象がとらえられており、地下に液体の水が存在すると考えられています。

エンケラドス

エンケラドス。北半球にはクレーターが多く存在し、南半球には筋模様が見られる。

エンケラドス

エンケラドスの南極域から噴出する水蒸気。

ほかにも、巨大なクレーターを持つミマス、表面の色がきれいに二分されているイアペタス、環を安定させる役割を果たす羊飼い衛星のプロメテウス、パンドラなど、面白い衛星が多数あります。

ミマス

ミマス。巨大クレーターの「ハーシェル」が見える。

イアペタス

イアペタス。片面が暗く、もう一方は明るい。赤道部分に尾根があるのも特徴。また、ミマス同様に大きいクレーターも存在する。

エンケラドス、環、タイタン

手前からエンケラドス、環、タイタン。

多数の衛星

多数の衛星。(左)ヤヌス、(中央)パンドラ、(中央上)エンケラドス、(右)ミマス、(右端)レア。

探査機カッシーニ

土星探査機「カッシーニ」は2004年から2017年までの13年間、土星の大気や模様、環の構造、衛星の特徴などを詳しく調べました。前述したタイタンやエンケラドスに関する発見など科学的な成果だけでなく、数々の美しい画像も私たちに届けてくれました。多数の衛星が環や本体の細かい模様と共に写し出されるのは、土星の近くを飛び回る探査機の視点ならではです。

カッシーニの探査のハイライト(クレジット:NASA / Jet Propulsion Laboratory-Caltech)。