流星群進化論
「2001年しし座流星群」最後の流星嵐があなたの街にやって来る!
The theory of meteoids evolution.
2001 Leonids, last storm come to Japan!
阿部新助(宇宙科学研究所・惑星研究系・MUSES-Cグループ)
くわしくは星ナビ2001年10月号をごらんください。
11月19日明け方、日本・アジアにやってくるしし座流星群最期の「嵐」
Encounter with 2001 Leonid Meteor Storm in East Asia.
太陽系力学進化のシナリオが示すその根拠
courtesy; (株)リブラ
Abstract
From prediction to forecast for meteor showers.
流星群予測から流星群予報の時代へ
しし座流星群は、壮大な流星雨、流星嵐をもたらす流星群として有名である。1833年11月13日未明には北米で1時間当り1万個、1966年11月17日未明には同じく北米で1時間当り15万個もの流星が降り注いだ。これらの流星嵐を予測するには、彗星から放出される流星をもたらす塵(ダスト)の運動について詳しく知ることが重要である。レーダーや可視光で観測されるこれら流星ダストの大きさは、直径が100ミクロン(0.1ミリメートル)から数十センチメートル程度で、さらに流星群活動を起こすためには、母彗星の軌道が1AU付近で地球軌道と交わっていなければならない。流星群の活動を研究する事は、近日点付近でどのように彗星から流星ダストが放出されたのか、彗星核からの質量放出の物理過程を調べることに他ならないのである。しし座流星群は、公転周期が33.2年のテンペル・タットル彗星(55P/Tempel-Tuttle)を母天体としており、さらに回帰後に流星が爆発的に発生することから、1998年2月の回帰後の数年間に、しし座流星嵐の出現が期待されている。本稿では、流星群の形成過程モデルを概説し、これまでジンクスや憶測で語られてきた流星群の出現予測が、高い確度と科学的根拠をもって予報できるに至った、北アイルランド、アーマー天文台のデビッド・アッシャー博士らの流星群予報について説明する。
ステージ1【放出】;彗星核からの流星ダストの放出
近日点通過付近(日心距離1AU付近)で最も激しく太陽にあぶられた彗星は氷が気化(昇華)し、彗星核表面の活動領域から秒速1キロメートル程で吹き出すガスの流れと共にダストが運び出される。彗星核からのダストの放出モデルは、1951年、ホイップル博士により初めて提唱され、現在でも基本公式として使用されている。このホイップルの公式を用いると、直径約1.8キロメートルのテンペル・タットル彗星から放出される流星ダストの速度は、ダストのサイズや密度によっても異なるが、およそ秒速数十メートルと見積もれる。流星ダストの放出速度は、特にアウトバーストと呼ばれるフレッシュなダストによってもたらされた継続時間が短い(1時間以内程度)突発流星群の放射点(地球から見た流星ダストの天空への射影点)の広がりからも計算することができる。1995年のしし座流星群のアウトバーストの際の放射点の赤緯方向の広がりは約0.08度であり、テンペル・タットル彗星の軌道に垂直な方向への流星ダストの放出速度が、秒速100メートルより小さい事を示唆している。これはホイップルの公式から導かれる結果と良い一致を示す。
秒速数十メートルという流星ダストの放出速度は、彗星本体の軌道速度(テンペル・タットル彗星の近日点付近での速度はおよそ毎秒40キロメートル)に比べると非常に小さいため、流星ダストは、彗星核を取り巻く雲のように存在する。一方、地上から観測される彗星のダストの尾は、大きさがミクロン程度のより小さな粒子で、太陽光圧により秒速数百メートルで一気に飛ばされて形成されたものである。流星ダストは、彗星のダストの尾とは別ものであり、新たに放出された流星ダストそのものは、彗星コマのさらに内側の彗星核近傍に存在しているため地上からは見えない。
ステージ2【トレイル形成】;ダスト・トレイルの形成 ==> 流星群活動の開始
地球や木星などの惑星と同様に、彗星や流星ダストの運動は、太陽を通る平面内で太陽を焦点の1つにした楕円運動を行う。太陽に近い時には速く運動し、太陽から遠く離れたところにあるときはゆっくりと運動をする。このように、ケプラーの法則に従う運動をケプラー運動と呼ぶ。一方、ニュートンは、ケプラーの法則を数学的に証明し、全ての質量を持つ物体の間に働く万有引力の法則を発見した。彗星軌道に垂直に放出された流星ダストは、母彗星の軌道速度とほぼ同じ速度でケプラー運動するため、軌道周期も母彗星と変らず、同時期に近日点に回帰する。しかし、彗星の進行方向へ放出され増速した流星ダストは、軌道周期が長くなり、母彗星より遅れて近日点に回帰し、後方へ放出され減速した流星ダストは、軌道周期が短くなり、母彗星より先に近日点に回帰する軌道をたどる。
一般に太陽系内のダストは、万有引力によって太陽に引き付けられる力を受けていると同時に、太陽の光の圧力(光圧、輻射圧)により太陽から遠ざけられる力も働く。この輻射圧は粒子の断面積、つまり粒子半径の2乗に比例する。一方、万有引力は粒子の質量、つまり粒子半径の3乗に比例するので、粒子半径が小さくなるほど万有引力に対して輻射圧の効果が相対的に大きくなり、益々太陽の引力を弱める傾向を示すことになる。ダストのサイズが1ミクロンを切るようになると、輻射圧が太陽引力に匹敵するようになるが、ミリメートルサイズの流星ダストには輻射圧は殆んど効かずに、彗星核から等方的に放出された場合、彗星核前後の軌道上に等方的に存在する。一方で、サイズの小さい流星ダストは輻射圧で母彗星軌道の外側へ運ばれ、彗星本体よりも周期が長くなり、母彗星より遅れて近日点に戻ってくる。それゆえ、小さなサイズの流星ダストは彗星の後方に集まり、母彗星の前後のトレイルは非等方的に分布することになる。
母彗星から放出された流星ダストは、母彗星が数〜数十公転する間にやがてダスト・トレイルと呼ばれる長いダストのチューブを形成する。流星群、特に流星嵐は、地球が濃いダスト・トレイル中を横切る時に発生する現象であり、一般に彗星軌道の外側、彗星の後方で濃いダスト・トレイルに遭遇する。このように太陽光による輻射圧は、初期の流星ダスト・トレイル形成に深い役割を果たしている。
赤外線天文衛星ISOから撮影されたエンケ彗星(2P/Encke)とダスト・トレイル(エンケ・トレイル)
おうし座流星群の母天体として知られるエンケ彗星の核近傍を231分割して中間赤外線(8〜15ミクロン)で撮影した合成画像。横軸は赤経、縦軸は赤緯を表わしている。中央部にエンケ彗星のコマとダストの尾があり、左下から右上へダスト・トレイルがはっきりと見られる。このダスト・トレイルの幅は約2万キロメートルで、軌道周期3.3年のエンケ彗星が10周回する間に形成されたと考えられている。
ステージ3【共鳴】;共鳴によるダスト・フィラメントの形成 ==> 突発流星群の形成
母彗星の軌道と地球軌道の距離が大きく離れているにも関わらず、突発的に出現する流星雨現象の要因として、ダスト・トレイルの一部が木星や土星、天王星などの外惑星に接近して、その場所の流星ダストだけが軌道を大きく変えられるような現象や、太陽系で最も大きな惑星である木星による軌道の共鳴現象が考えられる。平均運動共鳴と呼ばれる力学的な力が働くと、ダスト・トレイルは濃い状態のまま長期間保持される。たとえば、冥王星が太陽の周りを3公転する間に海王星は2公転するように、2つの天体の公転周期が整数比になる運動を平均運動共鳴と呼ぶが、この平均運動共鳴が起きると、しばらくの間は軌道が安定状態になり、その軌道を保ち続けるのである。しし座流星群の場合、テンペル・タットル彗星の公転周期(33.2年)と木星の公転周期(11.86年)が、ちょうど5:14の割合で平均運動共鳴にあり、彗星から放出されたダストが拡散せずに、濃いダスト・トレイル(ダスト・フィラメント)が維持されるのである。
ステージ4【定常群化】;ダスト・ストリームの形成 ==> 定常流星群の形成
母彗星軌道の前後へ伸びたダスト・トレイルは、彗星核といっしょに軌道運動しながら、彗星核に対して放出速度の相対速度で広がっていく。最終的には軌道を1周してつながり、軌道のどの場所にも流星ダストが存在するダスト・ストリームを形成する。このダスト・ストリームは、母彗星の回帰とは関係なく、毎年同じ頃に出現する定常流星群をもたらす。また、ダスト・ストリーム中にも木星などによる平均運動共鳴や地球通過によるじょう乱が働くことから、流星ダストの濃淡が生じ、定常流星群活動に年変化が見られるのである。このダスト・ストリームは、流星群のバックグラウンド構造(空間構造で500万〜1000万キロメートル)として2〜4日間一定の活動を示す。毎年定常的に見られる「ふたご座流星群」のダスト・ストリームは、600〜2000年前に形成されたと考えられている。
ステージ5【摂動】;惑星摂動による軌道進化 ==> ダスト・ストリーム中の微細構造の形成
太陽系内天体の運動を調べる場合には、一般にN個の質点が万有引力で相互作用している系(N体問題)を考える。つまり、惑星(水金地火木土天海)はそれぞれ8個の質点とし、太陽と8つの惑星がつくる重力場の中を質量ゼロとみなせる流星ダストがニュートン力学に従って運動していると考える。ケプラー運動を行っている粒子は、軌道長半径、離心率などの軌道6要素は変化しないが、運動を乱す力(摂動力)が働くと定数であった軌道6要素が時間とともに変動をする。この惑星による摂動は、短い時間ではあまり影響が効いてこないが、流星ダストの軌道を変化させる最大の原因となるものである。また、平均運動共鳴状態にあるダストは、母彗星とは異なる摂動を受けるため、流星ダスト・ストリームの中の複雑な構造を形成するのである。これらの微細構造が流星嵐をもたらすが、その継続時間は30分〜1時間程度(空間構造で5万〜10万キロメートル)と非常に短い。
☆ マクノートとアッシャー博士らの理論が注目される理由
これまで殆んど行われていなかった8つの惑星による摂動力をダスト・トレイルのモデル計算に取り入れて、ダスト・ストリーム中の複雑なダスト・トレイルの計算を行ったのがアッシャー博士らの研究であり、注目すべき新しい点である。とはいえ、力学の基本過程に忠実に計算を行なっているだけであるので、誰が計算しても同じ結果が得られるはずである。そもそもこの理論は、ロシアの研究者が発表したものであり、その後、1998年マクノートが流星ダストの進化の計算の詳細を考案し、小惑星の軌道計算を行なっていたアッシャーに共同研究の話を持ちかけたものである。これまでの流星群活動は、母彗星の黄道面通過の際の交点黄経と、母彗星からの距離で予測されていたが、正確なダスト・トレイルのモデルを確立し、さらに空間分解能を上げた計算により、約5分の精度で流星群の出現ピークを予報できるに至ったのである。さらに過去の観測結果のピーク時刻とモデル計算値を比べることにより、ダスト・トレイル中のダストの偏りを調べ、より正確なピーク時刻を導出している。近年のコンピューターの著しい性能アップがこれらの複雑な計算を可能にし、流星ダストの力学進化モデルに進展をもたらしたともいえよう。
本場のギネスビールをおごってくれた ご機嫌なデビッド・アッシャー氏{右}(イギリスのパブにて、{左};筆者)(Apr. 2000)
ステージ6【拡散】;散在流星、黄道光ダストへの進化
定常流星群を引き起こす流星ダスト・ストリームは、度重なる惑星との遭遇で約1万年程度でダスト・ストリームが拡散してしまいもはや流星群活動としての見極めが困難になる(拡散時間による流星群の寿命)。これらの流星ダストは散在流星として観測される。また、1万年から100万年のタイムスケールでは、他の流星ダストや黄道光ダストとの衝突が起こり、流星ダストは破砕してサイズを小さくしながら惑星間空間に散逸する(流星ダストの物理的寿命)。さらに100万年から10億年のタイムスケールで見ると、ポインティング-ロバートソン効果(輻射圧が流星ダストにブレーキをかけ、減速することによって徐々に内側の軌道へ落ち込んでいく効果)やヤルコフスキー効果(自転する流星ダストの表面温度の不均一性によって微小な熱輻射の差が生じ、軌道の摂動が起こる効果)により、最終的には黄道光ダストへ進化すると考えられる。地球軌道付近に存在する10〜70パーセントのダストは、こういった彗星起源のダストであると考えられている。
☆ '98年、'99年、2000年の出現結果
図は、テンペル・タットル彗星が放出した流星ダストが形成するダスト・トレイルの黄道面上の断面と、地球軌道との位置関係を表わしたもので、黄道面を北から見下ろした状態で示している。青丸は11月18日前後の世界時0時の地球の位置で(地球は右したから左上へ公転運動していく)、実際大きさの10倍に拡大しており、1998年にテンペル・タットル彗星が通過した黄道面上の位置は緑の×印で表示している。流星ダストは、地球の公転方向とは逆向きに、黄道面に対して約17度の傾きでおよそ秒速40キロメートルで紙面上から下へ運動している。各ダスト・トレイルの断面の横には、流星ダストが放出されダスト・トレイルが放出され形成された年代が付記されているが、摂動や拡散によって失われたトレイルに関してはプロットされていない。ここでは、9回帰前(1998年では6回帰前)、つまり過去300年間(1998年では過去200年間)に母彗星が形成したダスト・トレイルのみ表わしている。色の違いは放出(形成)年代の違いを表わしているだけで、ダスト・トレイル中の密度の違いではない。地球が”いつ”、”どの”ダスト・トレイルに遭遇あるいは接近するのかは、この図から大雑把に判定できる。
【1998年】は、地球軌道に十分に接近するダスト・トレイルは無かったが、予想外の火球による流星雨がヨーロッパに出現した。アッシャー博士らの計算で、この流星雨は、1333年の放出された彗星核近傍の比較的大きな流星ダストが、木星と5:14の平均運動共鳴状態で保持されたものであることが分かった。また、1965年、1932年、1899年のいずれかのダスト・トレイルに起因すると思われる小ピークも中国などで観測されている。以下に、観測結果のピーク時刻(世界時)と太陽黄経、およびZHRと同定されたダスト・トレイルの形成年を示す。ここで、天頂1時間流星数(Zenithal HourlyRate; ZHR)とは、最も理想的な条件(6.5等級の恒星が見える快晴の空で放射点が天頂にあった場合)で、一人の人間が天頂を眺めたとき、1時間に観測されるであろう流星数のことである。
courtesy; Armagh Observatory
【1999年】は、1899年の放出ダストとの遭遇により、ヨーロッパで1時間当り4千個の流星嵐が出現した。1899年のダスト・トレイルは、1966年の大流星嵐を引き起こしているトレイルでもあり、1966年の時に比較すると、トレイル中心から遠くを地球が通過したが、豊富な流星ダストが同様の嵐をもたらしたのである。アッシャー博士らの予報は、2時10分(世界時)で、ダスト・トレイルモデルの正確さが評価された。NASA主催の国際航空機観測ミッション(Leonid MAC)も地中海上空で流星嵐に遭遇し、流星科学を大きく進展させる様々な科学的成果を挙げることができた。また、流星嵐の中に継続時間が10分未満(空間構造で2万キロメートル以下)のサブ・ピーク構造が複数検出されているが、ダスト・トレイル中の微細構造として、新たな研究の切口になるかもしれない。この空間スケールがエンケ・トレイルと同程度である所も興味深い。
courtesy; Armagh Observatory
【2000年】は、1733年と1866年のダスト・トレイルによる流星雨がヨーロッパとアメリカでそれぞれ観測された。トレイルの中心に十分に接近しなかったためか、流星嵐までにはならなかったが、いずれの出現もアッシャ─とマクノートのモデルと良い一致を示しており、いよいよ流星予報への確信が得られた。
courtesy; Armagh Observatory
☆ 今年の出現予想
【2001年】は、2つの流星嵐の到来が予想されている。11月18日には1767年トレイルが北アメリカ大陸に、19日には1866年トレイルが西太平洋(日本を含む東アジアとオーストラリア)に降り注ぐ。アッシャーとマクノートの予報を見ると、11月19日未明に日本で流星嵐が吹き荒れることになる。我々が搭乗するNASAの国際航空機観測ミッション(Leonid MAC)も、アメリカから沖縄へ飛行しながら観測する計画である。月も無く絶好の条件であるが、果たして本当に日本で流星嵐が出現するのであろうか?
courtesy; Armagh Observatory
母彗星の回帰毎に放出されるフレッシュな流星ダストによって形成される「ダスト・トレイル」という新たな見地から流星予報に取り組み、流星群構造を従来より詳細に理解することに成功したことは、これまでに詳説してきた。しかし、アッシャー博士らのモデルは非常に単純化されている。つまり、母彗星が近日点に回帰した正にその瞬間に、彗星核から等方的に流星ダストが放出されると仮定しているのである。一方実際の彗星を見てみると、例えば有名なハレー彗星の場合、表面全体から物質が吹き出しているのではなく、いびつな洋なし形をした核の全表面積の約14パーセントの部分にジェットの放出口があり、ガスやダストはそこから吹き出している。ダスト・ジェットが間欠的に不規則に吹き出していれば、ダスト・トレイルの中に濃淡ができるだろう。また、彗星も自転軸や自転周期を持っていたり、歳差運動(止りかけたコマのような味噌擂り運動)をしたりする。すると、彗星が回帰する度に太陽にあぶられる放出口の場所や、あぶられる期間が異なってくる。このような理由でダスト・トレイルの位置がシフトしていく可能性があるのだ。1999年の流星嵐のピーク時刻が、アッシャー博士らの計算から約10分先んじていたことは、実はこういった彗星の特質の一部が現れたものなのかもしれない。近日点付近での彗星活動や、流星ダストの放出メカニズムについて明らかにする意味で、流星嵐構造の継続時間や、しし座流星群の放射点の赤緯方向への広がりを詳細に調べることは非常に重要なのである。
ピーター・ジェニスキンズ博士は、1999年の観測結果とアッシャー博士らのモデルを合わせることにより、ダスト・トレイルが太陽方向へ若干シフトしているのではないかと示唆している。ジェニスキンズ博士の説を採用すると、1866年よりも1767年のダスト・トレイルの方が地球軌道に接近することになり、最大の流星ショーは日本ではなく、アメリカで発生することになるのだ!?でもご安心あれ、ダスト・トレイルのシフトを考えたとしても、日本を含む西太平洋では、ZHR=4000の流星嵐の出現が見込まれる。更に日本でのピークの場合、1699年と1866年の2つのダスト・トレイルからの寄与があるため、継続時間の長い流星嵐が楽しめる。
【結論】
しし座流星群の母彗星(Tempel-Tuttle 彗星)の塵との交差条件
第1象限:母彗星通過前に母彗星軌道の内側を地球が通過する場合。
第2象限:母彗星通過後に母彗星軌道の内側を地球が通過する場合。
第3象限:母彗星通過後に母彗星軌道の外側を地球が通過する場合。
第4象限:母彗星通過前に母彗星軌道の外側を地球が通過する場合。
一般に流星ダストのサイズ分布を見てみると、若いトレイルは古いトレイルに比較して、小さなダスト、つまり暗い流星を多く含んでいる。1866年のダスト・トレイルは、4回帰前の若いトレイルである。さらに母彗星が過ぎ去って既に1300日余りが経過していること、太陽輻射圧によりトレイル後方程小さな流星ダストが多いことなどを鑑みると、現在残っているトレイルでは、サイズの小さな流星ダストが相対的に多いと考えられる。一方で、今年の11月に日本の夜空を彩る予定の1866年のダスト・トレイルは、既に昨年、トレイルからの距離が離れていたにもかかわらず、ZHR=480という顕著な出現結を果示している。果たして流星嵐になることは必至なのである! これだけの数の出現があれば、たとえ街中でも1時間に数100個の流星雨、流星嵐が楽しめるであろう。厳寒の山中で凍えながら観測するよりも、あなたの街で夜空に弾ける新世紀の流星花火を楽しんでみてはいかがだろうか。
図は、2001年11月19日午前3時の関東地方の星空(北-東-南: 160度)である。青点線の目盛は、方位と高度を10度おきに示したものである。中央に「しし座」と放射点が昇っている。11月18日の東京地方の天文薄明(太陽が地平高度マイナス18°に達した時)始まりは 4時52分、日の出時刻等は 6時20分である。当日は、月も無く絶好の条件である。薄明開始の午前4時52分の「しし座流星群」の放射点高度は、約70度にまで達しており、月も無く好条件で望める。この時期は、「しし座流星群」の他に「おうし座流星群」(おうし南/北群)が出現している。おうし座の”すばる(プレアデス星団)”の方向に放射点を持つゆっくりと流れる(27km/sec)流星だ。「しし座流星群」とは、放射点も速度も大きく違うので判別は容易である。また、星図中の黄線は、黄道を示しており、空の暗い所では、明け方の黄道光が黄線に沿って東の空に美しくそびえ立っているはずである。
2001年11月19日:東京地方の値 (around Tokyo) | |
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月齢(Moon Age):2.8 | |
月の入(Moon set):(18日)18時56分 | 月の出(Moon rise):10時03分 |
日の入(Sun set):(18日)16時33分 | 日の出(Sun rise):6時20分 |
薄明終(Twilight):(18日)18時02分 | 薄明始(Twilight):4時52分 |
「地上の流星雨」と「地上100kmの流星雨」
星ナビ, 2001年11月号(pp8-13)
著者:阿部新助(あべ・しんすけ)
宇宙科学研究所・惑星研究系・MUSES-Cグループ
Star Navigator (monthly magazine), 2, No.11, pp8-13, 2001.
Author: Shinsuke Abe,
MUSES-C group, Planetary Science Division,
The Institute of Space and Astronautical Science
3-1-1 Yoshinodai, Sagamihara, Kanagawa, 229-8510 JAPAN
e-mail; mailto:avell@planeta.sci.isas.ac.jp
この記事は、阿部氏より特別に転載許可をいただき、しし座流星群スペシャルの 1 コンテンツとして作成したものです。オリジナルの記事は http://chiron.mtk.nao.ac.jp/~avell/meteor_evo/ よりご利用になれます。また、オリジナルの著作権は阿部氏に属します。
詳しくは、月刊「星ナビ」11月号をどうぞ