達人が伝授!2002しし座流星群攻略法電波編解説◎小川 宏(日本流星研究会) |
電波観測なら、流星群の活動を確実にとらえることができる。上空で流星が現われると、そこで電波が反射され、受信機につないだスピーカーから音として聞こえてくるのだ。月明かりにも左右されず、昼間であっても、また空が曇っていたとしても、流星の出現がわかるのだ。最近では気軽に電波観測を始められる安価な受信機も発売されている。流星群の“音”を楽しんでみてはいかがだろう。 |
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流星の電波観測とは、ふだんは送信局からの電波が届かない観測地でも、流星が出現すると、そこに跳ね返されて、送信局からの電波を一時的にキャッチできる原理を利用した流星の観測方法である。以前はFM放送の電波を利用した観測が普及したが、最近はFM局の多局化が進み、FM放送の電波を利用しての観測は困難となってきた。代わってアマチュア無線を利用した電波観測が1990年代後半から盛んになり、現在では、HRO(Ham-band Radio Observaiton)と呼ばれるアマチュア無線を利用した電波観測が主流となっている。HROの送信局は、福井県鯖江市の福井工業高等専門学校(前川公男氏)である。周波数は53・750MHzで出ている。 流星電波観測は、電波を利用しているため、悪天候でも昼間でも流星活動をとらえることができるのが最大のメリットだ。この観測方法で、数々の流星群の活動や、昼間の流星群、また突発出現もとらえられる。 2002年のしし座流星群は、薄明後、とくに昼前に活動が活発化してくると予測されているため、日本ではどうやら流星の電波観測がベストな観測方法になりそうだ。 |
機材は一式約2万円でそろえることができる。
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必要機材 | 目安金額 | 購入方法 | 問合せ |
ITEC製 HRO専用受信機 | 9800円 | 電話注文 |
アイテック電子研究所 |
アンテナ(COME製HB9CV) | 5600円 | 無線屋 or 電話注文 |
(株)富士無線電気 |
ケーブル(5DFB、10m) | 1980円 | 無線屋 or 電話注文 | |
電池ボックス(DC12V相当) | 500円 | 電気パーツ店など | |
スピーカー | 500円 | 電気パーツ店など |
モノラルでOK。なんでもよい。 |
塩ビパイプ | 400円 | ホームセンター | |
ペグ(3本) | 300円 | ホームセンター | |
合計 19080円(消費税・送料別) | 価格は2002年11月現在の調査価格 ですが、変動することがあります。 |
アイテック製のHRO専用受信機は、周波数の調整などは済まされた状態で供給されるため、ただつなぐだけでOK。前面には音量コントロールと、音声出力コネクタ、背面にはアンテナやDC12Vのコネクタがある。 | |
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必要なものを揃えたら、あとは正しくセッティングさえすれば、すぐにでも流星観測を始められる。 |
ステップ1 アンテナを組み立てる はじめにアンテナを組み立てる。アンテナを買うと、箱の中に説明書が入っているので、それを見ながら組み立てよう。決して難しいことはないが、各部品には、形は似ていても長さの違うものがある。一つ一つ、取り付け位置を間違えることのないよう、よく読んで組み立てよう。取り付け方を間違えてしまうと場合によってはまったく受信できないこともある。ちなみにアンテナの外観は、HB9CVでもA502HBでも大差はない。 |
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ステップ2 ポールを立てる 次にアンテナを取り付けるためのポールを立てる。ホームセンターなどで売っている塩ビパイプが安価でよい。長さは2メートルもあれば充分。まずは塩ビパイプの真ん中よりやや上に、フック金具を取り付けてひもを縛る。ポールを立てる位置を決めたら、あとはテントを立てる要領で、ペグを地面に刺してひもを固定する。この際、ひもをポール側かペグ側の片方を「自在結び」で結んでおくと、ひもの長さを調節しやすく便利である。 |
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ステップ3 アンテナを取り付ける 先ほど組み立てたアンテナに、ケーブル(5DFB)をつなげてから、アンテナをポールの上部に取り付ける。アンテナに付属する金具でしっかりねじ止めすればよい。このときアンテナの向きを決めるのだが、福井県鯖江市の送信局の方向にケーブルのコネクタ側がくるように設置する。また、送信局との距離によって、水平を向けるか天頂を向けるかといった違いもあるので要注意。詳しくは次ページの「ワンポイントアドバイス」を参照。 |
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ステップ4 受信機をつなぐ 受信機にケーブルを接続する。アンテナにつないだケーブルは受信機の背面側に差し込みジャックがある。電池ボックスに電池を入れ、電源ケーブルを受信機につなぐ。音を聞くにはスピーカーを前面のジャックにつなげばよい。接続するときは、受信機の電源スイッチが切れていることを確認してから行なうこと。また、ケーブルに足をひっかけてしまうことのないよう、ケーブルの取り回しにも気を遣おう。 |
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ステップ5 待つ 組み立て完了! 受信機の音量を上げて、スピーカーから出てくる「ザーッ」という音を聞いていよう。何も聞こえない場合は接続が間違っている可能性があるので要チェック。接続が正しければ、しばらくすると、「ザーッ」というホワイトノイズ(ラジオの局番があっていないときに聞こえる音)の中に、「コーーーン」という比較的高い音が聞こえる。これが流星に反射した福井高専からでの電波である。これが聞こえたら、流星がどこかで出現したことになる。一度聞くと頭に残るほど、印象的な音だ。音には強弱があり、長いときは1分以上続くときもあるので、聞いていて飽きない。1分以上の音を聞いたら、もう電波観測の虜になってしまうほど感激するはず。 |
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パソコンでラクラク自動観測もできる! 受信機につないだスピーカーから出る音を聞き続ける代わりに、パソコンに音声信号をライン入力してやれば、自動的に観測データをとることが可能だ。 パソコンは、ウィンドウズさえ動くものなら古いものでも大丈夫。CPU100MHz、メモリーは32MB、OSはウィンドウズ95以上であればOK! 受信機の音声出力の端子から、音声ケーブルでパソコンのサウンドカードにあるライン入力へとつなぐ。パソコン上では『HROFFT』という、春日部高校の大川一彦氏が開発した自動観測ソフトを起動しておけばよい。あとはソフトの設定で、信号レベルや強度表示を調整すれば完了だ。これで10分間に1画像、1日で144枚のデータをゲットできる。 なお、HROFFTは、CQ出版社から刊行されている『流星電波観測ガイドブック』に付属するCD‐ROMにも収録されている。 |
星ナビ2002年11月号 流星の電波観測(小川 宏)
CQ出版社 |