デジタルアストロノミー入門

画像処理した木星

デジタルカメラで
木星を撮ろう

太陽系最大の惑星、木星が夕空に輝いている。 そんな木星の姿を、デジタルカメラで撮影してみよう。 縞模様までクッキリと簡単に捉えることができるゾ!

夕空の南の空にひときわ明るく輝いている木星と土星。天体望遠鏡を持っていれば、木星の縞模様や土星の環などを簡単に見ることができる。せっかくだから、これら惑星たちの姿を撮影してみよう。
 撮影といっても、銀塩カメラで、手ブレに注意して……といったことは考えなくていい。デジタルカメラで撮影して、さらにパソコン上で画像処理を行なうことで、銀塩写真にも負けない、みごとな惑星画像を得ることができるのだ。それに惑星は、光害のひどい都会の空でも、問題なく撮影できる天体だ。

その撮影手順を、さっそくステップごとに見ていこう。

STEP1 惑星の撮れるデジカメ

まずデジタルカメラを用意する。

機種は、最近のデジタルカメラなら、“ほぼ”なんでもOK。一応どんなデジタルカメラが、惑星撮影に適しているのか、ポイントをあげておこう。

デジタルカメラ

STEP2 天体望遠鏡の準備

次に望遠鏡の準備をする。

惑星を撮影するには、「強拡大」する必要があるので、星を追尾できる赤道儀などが必要だ。また、望遠鏡のセッティングはしっかりとしておこう。

アイピースは、拡大率があがるほど惑星を導入するのが難しくなるので、最初はアイピースの焦点距離を長めにして、「中拡大」画像からチャレンジしよう。

天体望遠鏡
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天体望遠鏡
モーター付赤道儀の望遠鏡ならば、口径が5cm程度でも木星の画像を写すことができる。

STEP3 デジタルカメラを接続する

望遠鏡にデジタルカメラを接続する。

フィルターネジがないデジタルカメラでも、アダプターを使えば、簡単に望遠鏡と接続できる。「デジタルカメラアダプター」に、望遠鏡のアイピースとデジタルカメラを固定して、アイピースで望遠鏡に取り付ければいい。

このとき、アイピースの中心(光軸)とデジタルカメラのレンズの中心をあわせることがポイントだ。しっかりと固定できていないと良い画像が得られないので、注意。

デジタルカメラアダプター
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デジタルカメラアダプターとの接続
デジタルカメラをデジタルカメラアダプターに取り付けたところ。カメラのレンズの中心と望遠鏡の光軸が一致するように調整する。

接続の完了
デジタルカメラアダプターごと望遠鏡に接続する。
デジタルカメラのモニタを見ながら、光軸があっているか、確認しよう。
デジタルカメラの接続その2
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STEP4 対象を入れて撮影

望遠鏡で木星を捉えて、撮影しよう。

望遠鏡のファインダーで木星を中心に入れて、デジタルカメラのモニタ上にちゃんと木星が写っているか確認しよう。モニタに写る木星などの惑星は、意外と暗いので、注意が必要だ。

なかなかモニタ上に木星が写らない場合は、アイピースの焦点距離を長くしたり(拡大率を下げたり)、またはもう一度望遠鏡とデジカメの光軸を調整しなおしてみよう。

デジタルカメラのモニタのイメージ
デジタルカメラのモニタで木星が暗く写っていても気にすることは無い。この画像のようにある程度見えていれば、その後の画像処理でなんとかなるので、バシバシ撮ってしまおう。
撮影直後の画像

デジタルカメラは、できるだけ高画質画像で記録するように設定しておく。
シャッター速度や露出は、ほとんどオート設定でかまわない。もし、暗く写っていても、あとで「画像処理」で補正してしまうので、とにかく撮影してしまおう。

撮影(シャッター)は、リモコンやセルフタイマーを使ってシャッターをきろう。そうすれば、カメラにさわらずに撮影できるので、手ブレを防止できる。ほかに、レリーズを使ってもいい。

できるだけたくさんの枚数を撮影しておこう。後で、複数の画像を1枚に合成して、きれいな画像に仕上げることができる。また木星の場合、自転速度が早いので、数分以内にまとめて撮れるだけ撮っておくといい。

STEP5 パソコンで画像を確認

撮影した画像をパソコンに取り込む。

デジタルカメラに付属のパソコン接続キットやソフトを使って、全部画像ファイルとして、パソコンに保存しておく。

まずは画像を1枚ずつ見てみよう。ふつうに見ると、木星がぼんやりと暗く写っているだけかも知れない。しかし画像処理ソフトで明るさを調整したりすることで、どんどん「いい写真」にすることができる。

たとえば、「レベル」(明暗の幅)を調整することで、ぼんやりとしか見えていなかった木星がハッキリと見えてくる。しかし、その分ざらつきも目立つようになる。これは、次の「画像処理」で解決する。

撮影直後の画像
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レベルを調整した木星画像
レベルを調整することで、木星像をハッキリしたものにすることができる。

STEP6 画像処理できれいにする

画像処理で画質をきれいにする。

1枚だけだと上の写真のようにザラついているが、複数の画像を合成(コンポジット合成)したり、ボケの補正(画像復元)、細部の強調(アンシャープ)などの画像処理を加えて、画質を向上させることができる。
画像処理するには「ステライメージ3」などの天体画像処理専用ソフトがあると便利。

画像処理中の木星画像
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画像処理中の木星画像
きれいに仕上げるには、画像処理がポイント。コンポジット合成、画像復元、アンシャープマスクなどが、天体画像処理の基本!パラメータの選び方などで仕上がりが変わってくるので、納得いくまでじっくり取り組みたい。

下の画像は20枚の画像をフジファインピックス2900Zで撮影、ステライメージ3で自動コンポジットの後、ウィーナーフィルターで画像復元。アンシャープマスクをかけて画像をシャープにした後、Lab色彩調整で色調を整えたもの。

たったこれだけで、かなりきれいな木星写真を得ることができる。 あとは、カラープリンタなどでプリントアウトするなり、ホームページに飾るなりお好みのまま。

画像処理をした木星画像
1枚では、ざらついていたものが、20枚を合成し画像処理をすることで、ここまでの仕上がりにすることができる。処理前の画像と見比べて欲しい。
撮影時のピントなどを追い詰めれば、これ以上の画像を目指すことも簡単だ。

画像処理をした木星画像
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最後に

望遠鏡・デジタルカメラ・パソコンさえあれば、このように簡単に、木星の美しい拡大画像を得ることができる。
もちろん、このシステムで撮影できるのは木星ばかりではない。明るくて大きい月などは、もっと簡単に撮影・処理が可能だ。望遠鏡の導入も楽だし、たった1枚撮影して(コンポジット合成することなく)、アンシャープマスクを施すだけで、きれいな月面写真になるからだ。

これだけ簡単なシステムで天体画像がガンガン撮れるのも、「デジタル」の魅力のひとつだ。次は、環の美しい土星にもチャレンジしてみよう!


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