【訃報】素粒子物理学の発展に大きく貢献、益川敏英さん

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7月23日、2008年のノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さんが81歳で亡くなった。

【2021年8月5日 名古屋大学

7月23日、物理学者の益川敏英さんが亡くなった。享年81。

益川さんは、名古屋大学理学部の学生時代に素粒子の研究を始め、1967年に名古屋大学院理学研究科博士課程を修了した。その後、名古屋大学理学部助手、京都大学理学部助手、東京大学原子核研究所助教授を経て、1980年に京都大学基礎物理学研究所教授に就任した。同研究所所長などを歴任後、2003年に定年退官し、同年から2019年まで京都産業大学教授を務めたほか、2009年には名古屋大学特別教授にして同大学素粒子宇宙起源研究機構の機構長も務めた。

1973年に発表した論文の中で、益川さんは同じ京都大学の助手だった小林誠さんと共に「小林・益川理論」を提唱した。この理論は、粒子と反粒子のふるまいが非対称的であるという「CP対称性の破れ」を説明するものであり、当時まだ3種類しか発見されていなかった素粒子の1グループ「クォーク」が6種類以上存在すると予測していた。

残る3種のクォークは1995年までに高エネルギー加速器を使った実験から見つかった。21世紀初頭には日本のつくば市にある高エネルギー加速器研究機構(KEK)と、米・スタンフォード線形加速器センター(SLAC)研究所が相次いでCP対称性の破れに関する実験を発表し、小林・益川理論が正しいことを裏付けた。

小林・益川理論は現在の素粒子物理学の根幹を支えるものである。素粒子物理学の発展に大きく貢献したとして、益川さんは、小林さんや南部陽一郎さんとともに、2008年にノーベル物理学賞を受賞した(参照:「日本出身3氏にノーベル物理学賞」)。

益川敏英さん
益川敏英さん(提供:名古屋大学)