小惑星を狙い撃つ探査機「ダート」、打ち上げ成功

このエントリーをはてなブックマークに追加
NASAの惑星防衛実験探査機「ダート」が日本時間11月24日に打ち上げられた。約10か月後に小惑星に衝突して軌道を変える計画で、将来の地球への天体衝突に備えるための実験検証を初めて実施する。

【2021年12月1日 NASA

日本時間11月24日15時21分、NASAの惑星防衛実験探査機「ダート(DART)」を搭載したスペースX社のファルコン9ロケットが、米・カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地から打ち上げられた。約1時間後にロケットから探査機が分離され、その数分後に最初のテレメトリデータが地上へ届いた。さらにその2時間後、探査機は長さ約8.5mの2枚の太陽電池パネルを展開し、打ち上げは無事に成功した。また、再利用型であるファルコン9ロケットは、海上で待機していた船上に垂直着陸した。

ファルコン9ロケットの打ち上げ
ファルコン9ロケットの打ち上げ(提供:NASA/Bill Ingalls)

ダートは「Double Asteroid Redirection Test(二重小惑星進路変更実験)」の略で、地球の脅威となるような小惑星や彗星といった天体の衝突に備えるための実験検証を行う初のミッションだ。探査機は2022年9月26日から10月1日の間に、直径約780mの小惑星「ディディモス((65803) Didymos)」の衛星「ディモルフォス(Dimorphos)」(直径約160m)に秒速約6kmで衝突する。この際の衝撃で、ディモルフォスの公転周期は数分程度短くなる計算だ。

DARTミッションのインフォグラフィック
衝突実験のイメージ。ディディモス(中心)を公転する衛星ディモルフォスに探査機が衝突し、ディモルフォスの公転軌道は白から青に変化する(提供:NASA/Johns Hopkins APL

衝突の様子や衝突で飛び散る物質などは、衝突に先立って分離するイタリア宇宙機関の小型衛星「LICIACube」が撮影する。また、衝突後のディモルフォスの軌道変化のデータは、地上の天体望遠鏡で計測される。これらの結果は、将来地球に衝突する可能性がある小惑星が見つかったときに、より有効な形で人工物体をぶつけて回避するために役立つものとなる。「この実験は私たちの惑星を守るための現実的な手段を検証する助けとなります」(NASA長官 Bill Nelsonさん)。

さらに衝突から約4年後にはヨーロッパ宇宙機関の探査機「ヘラ」が現場を訪れ、衝突の跡や小惑星の質量などを精密に調べる予定だ。

ダートとヘラのイメージイラスト)
ダートミッションとヘラミッションのイメージイラスト。画像クリックで拡大表示(提供:ESA/F. Zonno

「これまで関わってきた物事が机上の段階から現実となって宇宙へ打ち上がり、言葉では言い表せない気持ちです。しかし、これは第一段階の終わりでしかありません。調査・技術チームはこれから、ディモルフォスへの衝突というメインイベントに向け、多くの作業に追われます」(米・ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理研究所 Andy Chengさん)。