【訃報】プラネタリウム解説員・アマチュア天体家、金井三男さん

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旧五島プラネタリウムで解説をつとめ、月刊「星ナビ」で「こだわり天文夜話」を連載していただいていた金井三男(かないみつお)さんが6月10日にご逝去されました。享年77。謹んでお悔やみ申し上げます。

【2024年6月14日 星ナビ編集部

月刊「星ナビ」創刊号(2000年12月号)から始まり、最新の2024年7月号で第二百八十二話が掲載された人気連載「金井三男のこだわり天文夜話」。そこには金井さんのプロフィールとして「渋谷の旧五島プラネタリウムで解説員をつとめ、天文宇宙のありとあらゆる事象について独自の視点から『こだわり』をもって研究している。変光星の観測がライフワーク。」と書かれています。

金井三男さんは1946年東京神田生まれ。東京学芸大学で天文学を学び、教員を務めた後に東急渋谷の五島プラネタリウムで解説の仕事につきました。東急コミュニティに活躍の場を移してからは、各地のプラネタリウムで解説員をつとめながら後進の指導にあたりました。またカルチャーセンターの講師としても精力的に活動し、市民への天文普及に生涯にわたり携わりました。

金井三男さん
世田谷区立教育センタープラネタリウムでコンソールに座る金井三男さん。2008年、星ナビ編集部撮影

書店巡りが日課で、新刊書店のほか神田の古書店をまわり、天文の歴史や最新の宇宙を解説する書籍を購入しては、好奇心の赴くままにさまざまな事柄に関する情報をノートに書き留めていました。WEBコンテンツ「こだわり天文書評」では、独自の視点から天文宇宙関連の新刊書を紹介していただきました。「星ナビ」連載の「こだわり天文夜話」では、膨大な情報にもとづいたさまざまなうんちくやエピソードを披露して、幅広い切り口で読者を星の世界へ引き込んできました。また天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」を愛用され、古今東西の星空を行き来しては興味深い現象を拾い上げるなど活用。そのユニークな使いこなしは、『ステラナビゲータ活用集』としてハンドブックにまとめられています。また、『まんが 星のギリシア神話』をはじめとしたムックのコラムを担当していただきました。

アマチュア天文家としては、学生時代の恩師の影響から変光星、特にペルセウス座の食変光星アルゴルの観測を1966年12月から欠かさずに続け、500回の極小観測をめざしていましたが、近年は体調がすぐれず自ら2025年ごろと予想していた500回を達成できずに亡くなられました。それでも、アルゴルより短時間で観測することができるベテルギウスの光度観測は最近まで続けていました。

アルゴル観測
2008年3月投影の世田谷区立教育センタープラネタリウム オリジナル番組「こだわり天文家 金井三男のプラネタリウム物語」より、自宅近くの駐車場で変光星アルゴルを観測するシーンを抜粋。

星ナビのX(旧Twitter)で訃報を掲載したところ、多くの方からお悔やみの言葉と金井さんとの思い出が寄せられ、そのお人柄と天文普及への情熱を改めて知ることができました。金井さんには「スカイウオッチャー」時代からこれまで、40年以上もお世話になってきました。厚くお礼申し上げるとともに、深く哀悼の意を捧げます。現在編集中の「星ナビ」8月号では、頂戴していた「こだわり天文夜話」の原稿を最終話として掲載いたします。なお、ご葬儀は近親者のみで執り行われるとのことです。

金井さんがシナリオ・ナレーションを担当されたプラネタリウム番組「世界の星座」

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