“東洋一”ふたたび岡山の地に 東アジア最大級、京都大学の3.8m望遠鏡

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岡山天体物理観測所の隣接地で2018年開所を目指し建設中の、東アジア最大級の口径3.8m望遠鏡をレポート。同望遠鏡の愛称募集も紹介する。

【2017年11月9日 星ナビ

紹介:戸田博之さん(国立天文台 岡山天体物理観測所)
協力:京都大学

「星ナビ」2017年11月号掲載記事)

国立天文台 岡山天体物理観測所の隣接地に新しい銀色のドームが姿を現した。この京都大学岡山天文台(仮称)のドームには、東アジア最大級の口径3.8m望遠鏡が設置される。2018年春の開所を目指し、今も急ピッチで調整が行われている。

ドーム
3.8m望遠鏡ドーム。現在、見学やドーム周辺への立ち入りはできないが、岡山天文博物館(改修工事のため2018年3月上旬まで休館中)前の駐車場からドームを仰ぎ見ることができる(撮影/飯島裕)

岡山天体物理観測所は、岡山県南西部、浅口市と矢掛町にまたがる標高372mの竹林寺山に位置している。この地域は、一年を通じて晴天日数が多く大気が安定しており、国内における天体観測最適地の一つとなっている。1960年、その地に当時「東洋一の望遠鏡」と言われた口径188cm望遠鏡が設置された。そして現在、すぐ隣に新しく3.8m望遠鏡の設置が進んでいる。

3.8m望遠鏡は3つの特徴を持つ。1つめは、日本初の分割鏡。その形は世界初となる扇形で、内周6枚外周12枚の計18枚の鏡を組み合わせて直径3.8mの主鏡を構成する。

2つめは、世界初の研削による鏡の製作。これまでは鏡材を研磨して鏡を製作していた。しかし3.8m望遠鏡の鏡では、精密に削ることで高い精度の鏡面を作り上げる技術を開発し、仕上げにのみ研磨を行うことにした。そのおかげで短時間での鏡製作に成功している。

3つめは、超軽量架台。トラス構造を用いた軽量化によって架台の動きを速め、素早く目標天体に指向させることができるようになった。これら3つは日本で独自に開発された技術だ。

新技術望遠鏡
ドーム内で組み立てが進む3.8m望遠鏡(提供/京都大学)

こうして数々の新技術が盛り込まれた3.8m望遠鏡は、スーパーフレア、ブラックホールX線連星、ガンマ線バースト、太陽系外惑星などの謎の解明に大きな期待が寄せられている。現在、望遠鏡の愛称を募集中なので、ぜひ応募してみてほしい(望遠鏡公式サイト)。

愛称募集ポスター
愛称を募集中。12月20日(必着)まで(提供/京都大学)

一方、1960年10月に東京大学東京天文台(国立天文台の前身)の附属施設として建設された岡山天体物理観測所は、今年で開所57年を迎える。同所のシンボルである188cm望遠鏡は、近年では太陽系外惑星の発見・研究などで大きな成果をあげている。2015年にIAUが行った太陽系外惑星系命名キャンペーンでは、多くの天文ファンの支持により、同望遠鏡で発見された太陽系外惑星が6つも命名対象に選ばれた。このたび長らく務めた国立天文台による共同利用の任を解かれ、今後は組織と運用方法が大きく変わるものの研究テーマを絞り込み、より特化した研究観測が引き続き行われる予定だ。

新鋭の3.8m望遠鏡、古参の188cm望遠鏡、新旧の望遠鏡が納まる2つの大ドームが並ぶ姿を見ていると、日本の天文学の新しい展開に期待せずにはいられない。