【1997年10月 7日 NASAプレスリリース STScI-PR97-33】
NASAは7日、これまでに知られている星の中でも、もっとも明るい星の存在を確認
することに成功したと伝えた。
これはハッブル宇宙望遠鏡に新しく取り付けられた近赤外線カメラを使って UCLA(カリフォルニア大学ロスアンジェルス校)のチームが観測したもの。 今回見つかった星の直径は、地球の軌道直径ほどの大きさがあり、 放出するエネルギーも太陽の1000万倍もある。これは太陽が1年間かけて 放出するエネルギーをこの星はたった6秒間で放出している計算となる。
また今回の観測では、この星を取り巻くように存在するピストル形をした 星雲も同時に見つかった。この星雲は4光年もの大きさがある(これは 我々の太陽から、もっとも近い恒星であるαケンタウリまでの距離に 等しいほどの大きさだ)。 ピストル星、ピストル星雲とそれぞれ名付けられたこれらの天体は地球から 約2万5000光年ほど離れており、いて座の方向、ほぼ銀河系の中心部に位置する。 銀河系内に存在するさまざまな星間物質に遮られ、地球から可視光によって 見ることはできないが、もし遮るものがなかったとしたら約4等級の輝きを 放つ恒星と見えるだろう。
以前の観測から、ピストル星と周囲に存在する星雲はこの星の過去の 爆発過程によって作られたものではないかと考えられていた。 今回のハッブル宇宙望遠鏡によって得られた今回の観測結果からは、 この星が約4000年から6000年前に大爆発を起こし、 これにより星の表面が吹き飛ばされ、周りのピストル星雲を形成するに 至ったことが判明した。これまでに放出された質量は10太陽質量にもおよび、 これからもピストル星は質量を放出しながら減少し、 最後には超新星爆発を起こして死を迎えるという。
星は、ガスや塵などが濃く集った星間分子雲が、 自らの重力収縮によってできるため、その星の質量最大値は理論的に決定する。 今回、存在が確認されたピストル星はその形成過程において この理論的最大値を超えてしまったため、 爆発を起こしたのではないかと考えられている。
今回の発見は、星の誕生、そして進化といった過程の詳細に迫るものとして、 今後の研究成果に期待されている。