新彗星が発見されました。 発見したのはリンカーン研究所の地球接近小惑星研究計画 (Lincoln Laboratory Near-Earth Asteroid Research project;LINEAR)チームで、それを彗星と確認したのはアリゾナ州クロードクロフトのオファット(Offutt,W.B.)です。 認識符号は C/1998 G1 で、通称はチームの略称をとってリニア(LINEAR)彗星となりました。 明るさは18等とかなり暗いので、小望遠鏡で見るのはちょっとむずかしいでしょう。 現在「こじし座」から「しし座」に向かって逆行中です。 太陽観測宇宙天文台ソーホー(SOHO)のコロナグラフから発見された彗星を別にすると、これは今年最初の新彗星発見で、昨年11月のラーセン彗星以来の新彗星発見です。
天文ニュース(162),(164)でお知らせしたように、小惑星の中には地球のすぐ近くにまで接近するものがあります。 「いつか地球に衝突する」という可能性をまったく否定することはできません。 仮に衝突が起こったとすれば、小惑星の大きさによって状況は異なりますが、場合によっては全地球が壊滅的な被害を受けるかもしれません。 したがって、これらの危険な小惑星をなるべく早く発見し、対策を立てることが望まれます。
こうした立場から、世界では、すでにいくつかのチームが、地球に接近する小惑星探しをしています。 たとえば、月惑星研究所のゲーレルズ(Gehrels,T.)らのスペースウォッチ(Spacewatch)チーム、ジェット推進研究所のヘリン(Helin,E.F.)らのニート(Near-Earth-Asteroid Tracking;NEAT)チームなどです。 今回彗星を発見したリニアチームもそのような小惑星を探しているチームのひとつです。
小惑星が地球に近づくと一般に天球上の動きが速くなりますから、高速移動天体を探すのが地球に近づく小惑星を発見するひとつの方法です。 そして、リニアチームが探し出したこの種の高速移動天体の中で、4月2日に発見した18.9等のものが、ほぼ放物線軌道であることがわかりました。放物線軌道の天体は彗星の可能性が高いことが知られています。 そこで、国際天文学連合、電報中央局のマースデン(Marsden,B.)はその確認を各地に要請しました。 それに応えて、オファットがCCDを装備した口径60センチのリッチー・クレチアン望遠鏡で観測をおこなったところ、明瞭な尾が認められ、この天体が彗星であることがわかったのです。
最近の彗星の発見情況から考えますと、今後は、このような形で、小惑星探しの副産物として発見される彗星がますます増えると思われます。
参照 | IAUC 6863(Apr.6,1998) |
1998年4月9日 国立天文台・広報普及室