【1998年5月28日 NASA】
かつての火星に生命は存在したのか?これは今もって結論の出ていない問題だが、このほど火星周回軌道上を周っているマーズ・グローバル・サーベイヤーの観測により、太古の火星に豊かな水と熱水現象、そして厚い大気が存在した証拠を発見し、かつて生命が存在した可能性が一段と高まった。
生命の起源について様々な説があるが、現在最も有力なのが、海底で吹き出している熱水から生命が発生したというもの。これは近年における地球の海底探査で明らかになったもので、大洋を分断する形で横たわる海底山脈では、地下のマグマに熱せられた熱水が今でも吹き出し、多数の生命がコロニーを作っている。熱水には多数のミネラルが含まれ、生命活動の源となっている。
今回火星で発見されたのは、約500キロメートルに渡る赤鉄鉱の集積。この鉱床は、測定した結晶の大きさから考えると、大洋の海底で熱水作用によって堆積したものと考えられる。堆積には長い時間がかかるので、大洋が長期に渡り存在し、それと共に厚い大気も存在したことを示している。 現在火星を覆っている赤い砂は、この赤鉄鋼が細かく砕かれたものと考えられている。
画像の赤い部分が今回発見された赤鉄鋼。色が濃いほど赤鉄鋼の集積が多い事を示している。黒い帯状の部分は、マーズ・グローバル・サーベイヤーが走査を行った部分。黒い部分には赤鉄鋼は存在しない。マーズ・グローバル・サーベイヤーは、周回を繰り返しながら火星全土の調査を進めている。