長い間の謎とされていたガンマ線バーストが、非常に遠方で起きた、膨大なエネルギー流出をともなう爆発現象であることがわかったのはつい最近のことです(天文ニュース175)。 現在、こうした発見をもとに、多数の理論天文学者が、ガンマ線バーストのメカニズム追究を精力的におこなっていますが、また新しい事実が明らかになりました。
去る4月25日、ガンマ線観測衛星ベッポ・サックス(Beppo-SAX)は、「ぼうえんきょう座」にある「 GRB980425 」と名付けられたガンマ線バーストを検出しました。 アムステル大学のガレマ(Galama,T.J.)らは、このバーストの光学的アフタグローを捕らえようと、チリ、ラシーヤにあるヨーロッパ南天天文台の、口径3.6メートル新技術望遠鏡を4月28日にこの点に向けたところ、そこにある棒渦状銀河( ES0 184-G82と名付けられている)の腕に、15等級の超新星が出現しているのを発見したのです(この超新星には SN 1998bw の記号がつけられました)。
ガンマ線バーストの位置が超新星と一致したのは初めてのことです。 そして、ガンマ線バーストと無関係に超新星が偶然に同じ場所に出現したということは、確率から考えてほとんどあり得ないでしょう。 おそらく、ひとつの爆発現象が、ガンマ線領域の観測ではガンマ線バーストとして、また可視光の領域では超新星として捕らえられたものと考えるのが自然です。 それでは、ガンマ線バーストと超新星とは同じ現象なのでしょうか。 この点を明らかにするため、各国の天文学者は総力を挙げてこの天体の追跡観測をおこないました。
その結果、かなり詳細な状況が明らかになってきました。 まず、超新星 SN 1998bw は約1億4000万光年の距離にあり、ガンマ線による放出エネルギーもそれほど大きいものではなかったことがわかりました。 たとえば、昨年12月14日に「おおぐま座」で検出された大規模なガンマ線バースト「GRB971214」に比べると、そのエネルギーは僅かに10万分の1程度しかありません。 一方、電波による明るさが一般の超新星に比べて非常に明るいことや、可視域のスペクトルではイオン化した水素やヘリウムの線が見られないことなど、一般の超新星とは異なる特徴も見られました。 これらの点から考えて、ガンマ線バーストと一致して観測されたこの超新星は、通常とはかなり異なる特殊な超新星らしく思われ、また、ガンマ線バーストも一般的なものではないと考えられます。 したがって、今回観測された天体はひとつの特殊例である可能性が高く、ガンマ線バーストが必ずしも超新星に結び付くものではない、と考えた方がよさそうです。
このように、ガンマ線バーストと超新星が一致する最初の例が発見されはしましたが、残念ながら今回の発見からは、ガンマ線バーストのメカニズムの謎は、未だ解明されたとはいえないのです。
参照 | IAUC 6884(Apr.26,1998). |
IAUC 6895(May 7,1998). | |
Schilling,G. Science 280,p.1836(1998). |