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新彗星となった古い小惑星


【1998年12月10日 国立天文台天文ニュース(227)】

 1939 TN は、その名のとおり1939年に発見された小惑星です。 この小惑星はフィンランドのトゥルク(Turku)で、1939年10月7日にバイサラ(Vaisala,Y.)が発見し、彼とオテルマ(Oterma,L.)が35日間にわたって追跡観測をしたものです。 見かけはまったく小惑星状でした。 この観測の精密位置が1797年になってトゥルク天文台レポートに報告され、また、小惑星センターの MPC 4811にも記載されました。

 この見かけにもかかわらず、1939 TN の軌道は非常に彗星的なものであったので、オテルマは乾板を注意深く再検査し、像が多少拡散したような状況も見えると、1981年になって小惑星センターに連絡してきました。 彼女の指摘から、この天体はおそらく彗星であろうと結論されましたが、彗星軌道カタログには収録されませんでした。

 今年になって、リンカーン研究所の観測で、11月18日と20日に、ひとつの小惑星状の天体が捕らえられ、洲本の中野によってこの天体は 1998 WG22 として MPEC 1998-X19に記載されました。 ところが、偶然にもこの 1998 WG22 の位置は、小惑星センターのマースデン(Marsden,B.G.)が上記 1939 TN を軌道要素から積分して求めた位置と、僅かに角度の4分しか離れていないことがわかったのです。 これは同一の天体である可能性が高いと思われました。

 そこで、リニアチームは再度の観測をおこないましたし、さらに12月6日には、ドミニオン天文台の口径1.8メートル反射望遠鏡で観測がなされました。 その結果、バラム(Balam,D.)は 8秒の大きさのコマと、18秒の長さの尾に気付きました。 その後に、数人の観測者もコマや尾を認めましたので、この天体が彗星であること、そして 1939 TNと 1998 WG22 が同一の天体であることがはっきりしたのです。 こうして、59年前に発見された小惑星が、実は周期彗星であることがやっとわかり、P/1939 TN の認識符号が与えられることになりました。

P/1939 TN の軌道

 この彗星の国際天文学連合回報による軌道要素と予測位置を、以下に示します。

  近日点通過時刻 = 1998 Sept.27.2636 TT  近日点引数 = 165.3358
  離  心  率     = 0.246318              昇交点黄経 = 242.4572 (2000.0)
  近日点距離     = 3.391581 AU           軌道傾斜角 =   2.3399
  長  半  径     = 4.500018 AU           周    期   = 9.546年

  日付     赤経(2000.0)赤緯   地心距離   日心距離   太陽離角   明るさ
1998/99    時  分    度  分         AU         AU         度       等
  Dec.13   3 25.25  +18 45.9    2.504      3.410      152.9     16.8
      23   3 21.35  +18 25.6    2.588      3.415      141.8     16.9
  Jan. 2   3 19.34  +18 12.5    2.694      3.412      131.5     17.0

参照 IAUC 7064(Dec.7,1998).


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