星ナビ
しし座流星群 > しし座流星群アラカルト

■しし座流星群アラカルト

●11月18日に「しし座流星群」が出現するのは?

 そもそも流星は、地球に降り注ぐ「チリ」によって起こる現象だ。
 「しし座流星群」の素となる微小なチリは、テンペル・タットル彗星から放出されたもので、このテンペル・タットル彗星のことを、しし座流星群の母彗星(ぼすいせい)と呼んでいる。
 母彗星自体は、1998年2月28日に太陽に最接近した後、1998年3月8日に地球軌道面を北から南に通過している。しかし、母彗星の軌道上には、過去の接近で放出されたチリが拡散して分布しているために、母彗星の軌道に地球が接近するたびに、流星群が見られるというわけだ。そして、母彗星の軌道と地球が接近するのが、毎年11月18日ごろとなる。ある特定の時期に流星群が見られるのはこうした理由による。

<下:テンペル・タットル彗星>
テンペル・タットル彗星

<下:テンペル・タットル彗星の軌道>
テンペル・タットル彗星

 さて、回帰直後の1998年の場合地球は、母彗星の軌道上に拡散して分布している流星素物資=彗星核から放出されたチリの流れに、彗星核通過から258日遅れて遭遇した。

 今年2001年は母彗星の回帰から3年半もの年月が経過している。
 彗星核に近いほど多くのチリが軌道上にあって、それが大出現に結びつくことが多いという考え方があり、この説に沿って1998年は大出現が期待されたわけだが、実際はそうならなかった。むしろ、流星素物質の密度分布は核からの距離で単純に決まるものではないことから、1998年に大きな出現が見られなかったからといって、その後の年はさらに出現数が減るとはいえない。運よく昨年より濃密な素物質領域に遭遇して、あっと驚く大出現になる可能性も充分にある。実際1999年には大西洋のカナリア諸島などで流星雨が見られた。この辺の出現予測は、確固たる観測的裏付けがあるものではなく、実際に観測してみないとわからない。母彗星が地球軌道と交差した直後2〜3年ほどは、大出現のチャンスがほぼ等しくあるといってよいだろう。つまり、今年の場合も大出現になる可能性はある。1999年の大出現を予想し的中させたことで一躍有名になったアイルランドのアッシャー氏によれば、今年は日本付近で大出現が見られる可能性が高い、ということである。
 ところで、この時の地球の公転方向と、流星素物質の流れのベクトルの合成されたものが、地球大気に飛び込んでくる流星の方角となる。「しし座流星群」の場合は、それが見かけ上、しし座の方角にあるので「しし座流星群」と呼ばれる。

return to top




●流星群の素となるのは、彗星から放出されたチリ

 しし座流星群の母彗星であるテンペル・タットル彗星の回帰は3年前の1998年2月28日であり、現在は太陽から遠ざかりつつある。この母彗星の周りには、太陽接近時に放出されたチリが濃密に分布している。下は太陽に接近して、激しく揮発成分(水や一酸化炭素、シアンなど)を放出するテンペル・タットル彗星の想像図。彗星の核は、小さな岩石成分を含んだ氷の塊(汚れた雪だるまと形容される)だと考えられていて、太陽熱で融けた揮発性成分がガスとなって、核から噴出している。

<下:太陽に接近してガス成分を吹き出すテンペル・タットル彗星 想像イラスト/遠山御幸>

 このとき彗星核から噴出したガスは、イオン化して、太陽とは反対に伸びるイオンの尾(ガスの尾、プラズマの尾とも呼ばれる)を形成する。一方、ガスとともに放出された岩石成分の中で、流星の素となるチリより小さいミクロンサイズものは、太陽からの光圧で、しだいに彗星の外側に拡散していき、ダストの尾(チリの尾)となる。

ヘール・ボップ彗星1997年3月のヘール・ボップ彗星。太陽の反対方向に伸びる青色のイオンの尾は、プラズマ化したガス成分で、白く太く右方向に伸びているのがダストの尾。
写真撮影/高岡誠一


下:近日点通過前の1998年2月17日に撮影された、55P/テンペル・タットル彗星。この彗星は、それほど大きなものではなく、ごくありふれた周期彗星で、ダストの量も多いほうではない。写真提供/国立天文台
テンペル・タットル彗星

 彗星核から放出されたダストの中で、流星の素となる『ミリサイズ』の破片は、彗星核近傍にとどまり、放出時のスピードを得て、わずかに彗星核とは違う軌道をとり、しだいに彗星軌道上付近に拡散していく。この時、太陽接近時に彗星核から前方に放出されたチリは、加速され彗星核より大きな軌道となり、公転周期は長くなる。逆に後方に放出された場合は減速されて、軌道が小さくなり周期が短くなる。こうして、何回かの母彗星の回帰の後、彗星核のまわりに流星素物質の流れができる。さらに、流星の素となるチリは、彗星核からの放出スピードだけでなく、太陽からの光圧の影響を受け、わずかに軌道が外側に変化する。これによって、チリの軌道は、彗星核より大きくなる傾向があり、全体としては彗星核の前方より後方の方により多く分布することになる。これが、流星群の素となるチリの流れの形成過程であって、彗星核自体が地球近傍を通過する前後、とくに通過後2〜3年にわたって、流星群が大きな出現を見せる理由でもある。
 ちなみに、今回の母彗星の太陽接近に伴って放出されたチリは、まだ母彗星のごく。近くにあって、母彗星から大きく拡散はしていない。今回、大出現が期待されている「しし座流星群」の素となるチリは、数回前の太陽接近時に放出されたチリによるものだ。

<下:母彗星のテンペル・タットル彗星の軌道に拡散していく流星の素となるチリの流れ>
チリの流れ

return to top back



Copyright(C)  AstroArts Inc. All rights reserved.