幼い惑星の残骸を貪る若い星
【2018年7月25日 Chandra X-ray Observatory】
地球から約450光年彼方に位置する「ぎょしゃ座RW星A」は、誕生から数百万年ほどしか経っていないとみられる若い星だ。この星は数十年周期で明るさが変化し、暗い期間が1か月ほど続く。
2011年、この変光パターンに変化が見られた。星が暗い期間が約半年もの間続いたのだ。2014年の中ごろにも暗くなり、2016年11月には最も明るい状態に戻ったものの、その2か月後の2017年1月に再び暗くなってしまった。
米・MITカブリ物理学宇宙研究所のHans Moritz Guentherさんたちの研究チームは、可視光線でぎょしゃ座RW星 Aが明るかった2013年と、可視光線でもX線でも暗かった2015年および2017年に、NASAのX線天文衛星「チャンドラ」でこの星を観測した。
その結果、2017年に星が暗くなったのは、高密度のガスによって星の光が遮られたことが原因らしいことが明らかになった。2017年のX線観測では鉄原子からの強い放射が見られており、星が明るかった2013年と比べて少なくとも10倍以上の鉄が星を取り囲んでいる円盤に含まれていることが示された。
Guentherさんたちは、この鉄は2つの原始惑星の衝突で生じた残骸に由来するものと考えている。少なくとも一方は惑星になれるほど大きく、部分的に鉄を含んでいたようだ。
ぎょしゃ座RW星Aのような非常に若い星の周囲には、ガスや塵、微小天体などで構成される円盤が広がっている。こうした円盤内には原始惑星も存在している可能性がある。そのような成長途中の2つの天体が衝突し、その残骸が中心星へと落ち込んで塵とガスの厚い層が形成され、星からの光を一時的に遮っていたのかもしれない。
「惑星が若い星へ向かって落ち込むことは、コンピューター・シミュレーションによってかなり前から予測されていました。私たちのデータ解釈が正しければ、今回の観測は、若い星が惑星を飲み込んでいる様子を初めて直接とらえたものになるかもしれません」(Guentherさん)。
今後の観測で星の周囲の鉄の量が変化するかどうかがわかれば、鉄の供給源となった天体の大きさがわかる可能性がある。たとえば、今後1年から2年の間に鉄の量が変わらなければ、供給源となった天体の質量は比較的大きいと考えられる。
「系外惑星とその形成プロセスを理解するために現在多くの研究が熱心に進められています。中心星や他の若い惑星との相互作用で、若い惑星がどのように破壊される可能性があるのか、また、惑星が生き残る要因が何かを理解することは、とても重要です」(Guentherさん)。
〈参照〉
- Chandra X-ray Observatory:Chandra May Have First Evidence of a Young Star Devouring a Planet
- The Astronomical Journal:Optical Dimming of RW Aur Associated with an Iron-rich Corona and Exceptionally High Absorbing Column Density 論文