キュリオシティが見た火星の衛星の太陽面通過

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火星の衛星フォボスとダイモスが太陽面を横切る現象が、火星の地表で活動を続ける探査車「キュリオシティ」によってとらえられた。

【2019年4月10日 NASA JPL

地球の月が太陽の手前を通り過ぎると日食が起こるのと同様に、火星のある地点から見て、衛星フォボスやダイモスが太陽の手前を通り過ぎると、火星における日食が起こる。ただし、どちらも小さい衛星のため、太陽面をすべて覆い隠す皆既日食のような状態にはならず、太陽面通過と呼ぶほうがふさわしい現象だ。

NASAの火星探査車キュリオシティは今年3月17日(世界時、以下同)にダイモスの太陽面通過を、また26日にフォボスの太陽面通過をとらえ、その連続画像から動画が作られた。

ダイモスの太陽面通過 フォボスの太陽面通過
(1枚目)ダイモスの太陽面通過と(2枚目)フォボスの太陽面通過。ダイモスのほうが実際のサイズが小さく、火星からの距離が遠いため、見かけの大きさも小さい。約10倍速で表示しており、実際にはダイモスの通過は2分前後、フォボスの通過は35秒かかっている(提供:NASA/JPL-Caltech/MSSS)

探査車から衛星の太陽面通過を観測することは、見て楽しいだけでなく、衛星の軌道の精度を高めるという科学的な観点でも非常に重要だ。フォボスとダイモスの軌道は、火星や木星の重力、さらに衛星同士の重力の影響により変化し続けている。そのため、2004年にNASAの探査車オポチュニティとスピリットが火星に着陸してこの種の観測を行うまでは、衛星の軌道の正確性は極めて低かった。初めてダイモスの太陽面通過の観測が行われた際には、その軌道が予測より40km外側であることが判明している。

これまでに3台の探査車で、フォボスの太陽面通過は約40回、ダイモスについては8回の観測が行われてきた。依然として軌道に不確定性は残っているものの、探査車から太陽面通過がとらえられるたびに、精度は向上している。「火星上からとらえられた太陽面通過や、日の出や日没、気象現象などは、地球と似て非なる世界が単に本に書かれている存在ではなく、実在していることを教えてくれるのです」(米・テキサスA&M大学 Mark Lemmonさん)。