太陽に最接近したボリソフ彗星

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観測史上初の恒星間彗星であるボリソフ彗星が12月8日に太陽に最接近した。その最接近前後の姿をハッブル宇宙望遠鏡がとらえた画像が公開された。

【2019年12月17日 HubbleSite

今年8月に発見されたボリソフ彗星(2I/Borisov)は、当初はありふれた彗星の一つと思われていたが、その後の観測により太陽系の外からやってきた天体であることがわかった(参照:「観測史上2例目の恒星間天体、新発見のボリソフ彗星」)。恒星間天体としてはオウムアムアに次ぐ2例目の天体であり、恒星間彗星としては初めての天体である。

ボリソフ彗星は今月8日22時ごろ(日本時間)に太陽に最接近した。最接近とはいえ太陽までの距離は約3億kmあり、これは火星軌道よりも外側である。今月28日には地球と最接近し(約3億km)、その後は太陽系を離れて再び恒星間へと旅立っていく。

ボリソフ彗星
(左)11月16日(世界時)のボリソフ彗星。左の銀河はろくぶんぎ座の方向約4億彼方の「2MASX J10500165-0152029」。地球から彗星までの距離は約3億2000万km。(右)12月9日(世界時)、太陽最接近直後のボリソフ彗星(提供:NASA, ESA, and D. Jewitt (UCLA))

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)は今年の10月からボリソフ彗星の観測を行っている。「HSTの観測により、彗星の核の大きさの上限がわかりました。画像に写っていた核の半径は500m以下で、初期観測で示唆されていたサイズの15分の1以下であることが示されました。大きさがわかったことで、このような天体が太陽系や天の川銀河においてどのくらいありふれているのか、見積もりができるかもしれません。ボリソフ彗星のような彗星の数がどれくらいなのかを知りたいと考えています」(米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校 David Jewittさん)。

多くの望遠鏡による観測から、ボリソフ彗星の組成が太陽系内で見つかる彗星と同様であることが示されている。これは太陽以外の恒星の周りでも彗星が形成されることの証拠となる。ボリソフ彗星のように恒星間を移動する彗星がほかにも数多く存在していることは間違いないだろう。

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