観測史上最小、土星サイズの恒星
【2017年7月18日 University of Cambridge】
英・キャベンディッシュ研究所のAlexander von Boetticherさんたちが参加する系外惑星観測チーム「WASP」が、がか座の方向約600光年の距離に位置する史上最も小さな恒星「EBLM J0555-57Ab」を発見した。
EBLM J0555-57Abの質量は太陽の8.1%、木星の約85倍と見積もられており、これは恒星としては理論上最小の値である。星の質量がこれよりも小さいと、中心核の圧力が低いために水素の核融合反応が起こらず、恒星として光り続けることができないためだ。また、直径は太陽の8.4%、木星の84%と木星よりも小さく、土星(木星の83%)よりもわずかに大きいに過ぎない。
EBLM J0555-57Abは連星系を成している。この星が質量、大きさとも太陽とほぼ同じパートナーの星の手前を通過(トランジット)して、連星系の明るさが周期的に変化する食変光の様子を観測することで星が発見され、分光観測などにより正確な質量と大きさも明らかになった。
「この星は、これまでに発見されている多くのガス惑星よりも小さく、温度も低いようです。巨大な惑星よりも暗く質量の小さい恒星のほうが、大きさを明らかにするのが困難なことも多いのです。ありがたいことに、連星系になっていれば、トランジット法による惑星探しの設備を使うことで暗い恒星でも発見できます。信じられないかもしれませんが、1つの恒星を見つけることは、時に1つの惑星を見つけるよりも大変な場合があるのです」(Boetticherさん)。
「最小の星は、地球型惑星の発見やその惑星大気の観測に最適の条件を提供してくれます。しかし、惑星を調べる前に、その中心星を理解することが必須です」(ケンブリッジ天文研究所 Amaury Triaudさん)。
〈参照〉
- University of Cambridge:Smallest-ever star discovered by astronomers
- Astronomy & Astrophysics:The EBLM project. III. A Saturn-size low-mass star at the hydrogen-burning limit 論文
〈関連リンク〉
関連記事
- 2009/09/01 中心星に落下する運命の系外惑星
- 2009/08/14 軌道を逆走する系外惑星WASP-17b