火星にねじれた磁場の尾が存在
【2017年10月27日 NASA】
火星探査機「メイブン」の観測データから、火星には太陽風との相互作用でねじれた磁場の尾(磁気圏尾部)が存在することがわかった。この尾は、固有の磁場を持たない金星、内部から発生する磁気圏を持つ地球それぞれの磁気圏尾部の特徴を合わせたような独特のものだという。
NASAのGina DiBraccioさんたちの研究チームでは、「磁気リコネクション」(磁力線のつなぎ替え)と呼ばれるプロセスによって磁場の向きが太陽風に沿った角度から45度ねじれることを理論的に予測していた。メイブンの観測データはこの予測とよく一致していたため、磁気リコネクションが火星の磁気圏尾部の形成に大きな役割を果たしている可能性が高いと見られる。
火星は数十億年前には生命に適していた環境だったが、その後大気と水が失われ不毛の地となったと考えられている。火星を全体的に取り囲んだ磁場も、今では弱い磁場が部分的に残っているのみだ。今回の研究では、こうした火星地表の磁場が太陽風で運ばれてきた磁場と磁気リコネクションにより結合することで、磁気圏尾部が形成されたとしている。
磁気リコネクションにより、一部の大気の流出も起こる。地表磁場と太陽風磁場がつながるため、上層大気の荷電粒子が磁力線に沿って宇宙空間に逃げ出してしまうのだ。ゴムがぱちんとはじけるように磁力線がつなぎ変わることでエネルギーが放出され、磁場圏尾部を通して荷電粒子を活発に押し出す。
火星表面には部分的にしか磁場が存在しないため、その磁気圏尾部も、磁場がない金星、全球的な磁場を持つ地球、それぞれのものを合わせた特徴を持つと予測されていたが、メイブンの観測から初めてこのことが確認された。
今後研究チームでは、流出粒子の分布が磁気リコネクションの発生領域と一致するかを磁力計以外の搭載データから調べることで、磁気リコネクションが火星大気の流失に大きな役割を果たしていることを確認する予定だ。
磁力計データの調査も引き続き行い、火星の自転にともなう表面磁場の変化が、磁気圏尾部にどのように影響するかについても調べていく。表面磁場、そして絶えず変化している太陽風磁場とあいまって、磁気圏尾部も極めて変化に富んでいるはずだ。
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