天の川銀河に漂う星間ダストによる光散乱の異方性を解明
【2017年11月9日 関西学院大学】
天の川銀河には数千億個の星々が存在しており、その星々の間には固体微粒子(星間ダスト、星間塵)が漂っている。星間ダストは年老いた星の周りや超新星爆発で作られ、大きさは0.01~1μm程度と幅広く分布している。
星間ダストに当たった星の光は散乱され、散乱された光は可視光線や近赤外線で観測される。一方、星の光によって暖められた星間ダストは、主に遠赤外線の波長の熱放射を行う。したがって、散乱光(近赤外線)と熱放射(遠赤外線)の明るさはいずれもダストの量に比例するので、その比から星間ダストの性質を調べることができる。
関西学院大学の佐野圭さんと松浦周二さんは過去の研究で、NASAの宇宙背景放射探査衛星「COBE」に搭載された拡散赤外背景放射実験装置(DIRBE)が取得した近赤外線の全天マップの解析を行い、散乱光と熱放射の明るさの比が、低い銀緯(天の川の流れに近く、星や星間ダストが多いところ)では高い銀緯の数倍も大きいことを明らかにしていた。
しかし、従来の星間ダストモデルでは、星間ダストによる散乱の異方性や温度の分布が考慮されていなかったため、散乱光と熱放射の推算から、明るさの比の銀緯依存性を説明することはできていなかった。
そこで佐野さんたちはまず、「星間ダストによる光散乱は異方性をもち、その度合いはダストの大きさと光の波長に依存する」という最新の星間ダストモデルから予想される散乱の異方性を考慮して、散乱光の明るさを計算した。
次に、星間ダストによる熱放射は温度に依存するため、ヨーロッパ宇宙機関の天文衛星「プランク」による最新の全天温度マップに基づいて熱放射成分のモデルを作成した。
これらの結果をもとに、散乱光と熱放射それぞれの銀緯依存性を考慮したモデルを構築したところ、観測された明るさの比の銀緯依存性を説明することに成功した。星間ダストの性質の解明に寄与する研究成果である。
星間ダストは近赤外線の宇宙背景放射の前景光の一つであるため、この波長帯で宇宙背景放射を測定するうえでは星間ダストによる散乱光を除去する必要がある。今回の研究結果は、宇宙背景放射の測定においても重要な成果となった。
〈参照〉
- 関西学院大学:「天の川のチンダル現象」~星間ダストによる光散乱の異方性を解明~
- The Astrophysical Journal:Galactic Latitude Dependence of Near-infrared Diffuse Galactic Light: Thermal Emission or Scattered Light? 論文