※ この記事は 月刊星ナビ 2004年2月号 に掲載されたものです。
解説/井田 茂(東工大)+渡部潤一(国立天文台)
天文学でいま最もホットな分野のひとつが系外惑星(太陽とは別の恒星をめぐる惑星)の研究だ。つい先日も岡山天体物理観測所の 188cm望遠鏡で、日本初の系外惑星が見つかった。この種の研究にはプロの大型望遠鏡が必要、と思い込んでいないだろうか。 【参考】岡山天体物理観測所、巨星のまわりの惑星を発見か?! 2003年9月4日
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系外惑星が続々と発見されている
8年前の1995年までは系外惑星は人類にとって幻だった。少し詳しい人は 「バーナード星の惑星」 があったはずだと思うかも知れない。系外惑星探し(プラネット・ハンティング)は1940年代に始まり、バーナード星などいくつかの恒星で惑星が発見されたという報告があった。しかし、1970年代までには、それらの報告はすべて観測誤差であることが立証された。それからの20年あまり、プラネット・ハンティングは、長い冬の時代を過ごした。1990年代中盤に入ると世界の観測チームは次々とプラネット・ハンティングから撤退をしはじめた。
しかし、1995年10月に、ぺガスス座51番星のまわりを 惑星がまわっていることが 発見され、数々の検証を経て、間違いなく系外惑星だと確認された。木星の半分の質量を持ち、中心星から0.05天文単位 (太陽と地球の距離の1/20) という至近距離を周期4.2日で高速回転するという、非常識とも思える惑星だった。発見したのはスイスのマイヨールたちのチーム。実は他の観測チームも十分な観測技術をすでに持っていが、専門家チームは系外惑星系は きっと太陽系と そっくりなはずだ と考えていて、その先入観のおかげで観測データに含まれていた系外惑星のシグナルを、見落としていた。マイヨールたちは恒星連星のプロで、惑星には詳しくなかったので、先入観に邪魔されなかったのが幸いした。
先入観を捨てて観測することによって、その後、続々と系外惑星は発見され、2003年末現在では発見数は約120個にまで達した。今後もどんどん増えていくことだろう。発見された系外惑星の多くは、太陽系惑星からは想像だにできない、“異形”の惑星だった。ぺガスス座51番星の惑星同様に恒星の至近距離を強烈な恒星光にさらされながら数日で高速回転する「ホット・ジュピター」、中心星からの距離を大きく変えて、灼熱から酷寒までを 繰り返しながら周回する「エキセントリック・プラネット」などなど。一方で、少ないながらも太陽系の木星を 彷彿させるような惑星も 見つかりはじめた。これまで観測した恒星のうち10%近くで惑星が発見されている。これは驚くべき高い割合だ。