1976年7月31日、NASAの火星探査機バイキング1号が、火星表面上で撮影した驚くべき”モノ”の画像を送ってきた。それが「火星の人面岩」である。この画像は、公開直後から大きな話題となり、とくにUFO信奉者など、オカルト支持者からは「火星の人工建造物」の証拠だとして、今日まで、エセ科学ものの議論では必ずといってよいほど引き合いに出されるお馴染みの画像である。
今回、この「お騒がせバイキング画像」の真偽を確かめるべく、火星衛星軌道を周回中のマーズ・グローバル・サーベイヤーが22年(1998年4月6日)ぶりに同じ領域を精密撮影した。
(マーズ・グローバル・サーベイヤーによる火星面探査始動参照)
新たに送られてきた画像は、マーズ・グローバル・サーベイヤーに積まれている火星周回カメラ(MOC)によって撮像されたもので、1ピクセルあたり4.3メートルの解像度がある。バイキング画像は、低解像度のデータを画像処理によって強調したもので、見かたによっては「人面岩」に見えなくもなかったが(これさえ、かなり主観的な見方である。実際、自然物でも偶然にある特徴的なパターンに見えることがある)、高解像度のサーベイヤー画像では、単なる地形上の筋や窪みが写っているだけであった。
今回の発表内容はNASAのマーズ・グローバル・サーベイヤーのホームページにて、バイキング時の画像と今回の画像のヒストグラム比較など詳しい解説がされている。
1976年、バイキング1号が撮像した、火星表面の「人面岩」
左端の写真がバイキング画像をより詳しく解析したもの。
中央が、今回マーズ・グローバル・サーベイヤー(MGS)が撮像した
「人面岩」の画像。右端の画像はMGSによる画像で、バイキング画像に近づけるため、
光線が逆方向から照っているかのように見せるため、白黒反転したもの。