7万年前に大接近、オールト雲まで迫った「ショルツ星」
【2015年2月20日 ロチェスター大学】
2013年末にドイツのRalf-Dieter Scholzさんが、いっかくじゅう座の方向20光年彼方にある暗い赤色矮星を発見した。「ショルツ星」と名付けられたこの星は見かけの動きがひじょうに遅く、太陽系から遠ざかる動きが速いことから、米・ロチェスター大学のEric Mamajekさんらがその軌道を詳しく調べたところ、7万年前に太陽からわずか0.8光年(8兆km)のところを通過していたことがわかった。現在太陽系から最も近い恒星は4.2光年彼方のプロキシマケンタウリ(リギルケンタウルスC)で、その5分の1の距離ということになる。
1万通りの軌道を計算したシミュレーション研究によると、ショルツ星は98%の確率で太陽系の「オールト雲」(彗星のもととなる氷のかけらが球殻状に分布する領域)の中を通過したようだという。ただしオールト雲の中でも外側の領域だけなので、天体を弾いて地球などへの彗星の大襲来を誘因するには至っていない。
ショルツ星はとても暗いため、最接近時でも地球から見て10等の明るさにしかならなかったと考えられるが、磁場活動によるフレアで明るくなった場合には肉眼で見えていたかもしれない。
〈参照〉
- University of Rochester: A close call of 0.8 light years
- The Astrophysical Journal Letters: The Closest Known Flyby of a Star to the Solar System 論文
- SIMBAD: WISE J072003.20-084651.2
〈関連リンク〉
- University of Rochester: http://www.rochester.edu/
- AIP: http://www.aip.de/
〈関連ニュース〉
- 2000/11/15 - [HST] 太陽系からもっとも近い中性子星を観測