身元も原因も不明、超高速連星を初めて発見
【2016年4月15日 W.M. Keck Observatory】
かみのけ座の方向に位置するPB3877は、2011年にスローン・デジタル・スカイサーベイのデータから見つかった天体で、当初は高温で超高速のコンパクトな星として報告された。
独・フリードリヒ・アレクサンダー大学のPéter Némethさんたちの研究チームがハワイのケック10m望遠鏡とヨーロッパ南天天文台の大型望遠鏡VLTでこの星を分光観測したところ、低温の伴星の存在が示され、PB3877が超高速の離れた連星らしいことが明らかになった。表面温度が太陽の5倍以上で質量が太陽の約半分の星と、太陽より1000度ほど温度が低く太陽の約0.7倍の質量の星との連星系で、地球から1万8000光年の距離にある。
これまでに25個ほどの超高速星が見つかってきたが、それらはすべて単独の星であり、連星は今回が初の発見である。
PB3877の起源はわかっていない。超高速星の多くは銀河中心の超大質量ブラックホールで加速されたものと考えられているが、PB3877の軌道計算から銀河中心起源説は否定されている。また、星同士の衝突や超新星爆発が起源の可能性もあるが、いずれの場合も連星は崩壊するはずだ。
この連星は他の銀河からやってきた天体だとする考えもある。その場合には長期にわたって徐々に加速されるので、星自体は無傷でいられるのだ。とはいえ、天の川銀河の周囲にあるどの星の流れとも関連は見られず、やはり連星の起源やその将来についてははっきりしない。
PB3877が天の川銀河を離れてしまうのか、それとも銀河内に留まるのかは、銀河内のダークマターの量に依存する。PB3877は、天の川銀河のダークマターのモデルを検証するうえでも、うってつけの天体だということだ。
〈参照〉
- W.M. Keck Observatory: New Hypervelocity Binary Star Challenges Dark Matter, Stellar Acceleration Models
- The Astrophysical Journal Letters: AN EXTREMELY FAST HALO HOT SUBDWARF STAR IN A WIDE BINARY SYSTEM 論文
〈関連リンク〉
- W.M. Keck Observatory: http://www.keckobservatory.org/
- ヨーロッパ南天天文台(ESO): http://www.eso.org/
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