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2005年火星大接近

火星をスケッチしてみよう

火星をスケッチしてみよう

火星スケッチの様子

 1659年にホイヘンスが初めての火星スケッチを残してから約350年。その間に世界中でたくさんの火星スケッチが描かれてきました。

 スケッチはもっとも手軽で確実な記録方法。接近時にどんなもようが見えたのか、カメラがなくてもしっかりと残しておける。見えたまま、ありのままの火星の姿を鉛筆ですばやく描き込んでいきましょう。

 アイピースをのぞき、見えたままの火星を記録に残すもっとも簡単な観測記録の方法ですが、実際にやってみると…これがなかなか難しいのです。とはいえ、手間も費用もそうはかかりませんから是非挑戦してみてください。

スケッチ図協力:繭山浩司

用意するもの

火星スケッチに必要なもの

 それでは火星スケッチの方法について簡単にお話しておきましょう。まず、以下に掲げたものを揃えてください。といっても、特別なものはありません。すべて、文房具店や画材店で揃えることのできるものばかりです。

スケッチ用紙

スケッチ用紙

 上質紙を使った無地のノートか、ケント紙が適しています。直径5センチくらいの円をコンパスを使って描いておきましょう(口径8センチ以下の望遠鏡を使う場合には直径4センチくらいの方が描きやすいでしょう)。

右図のスケッチ用紙をpdfファイルでダウンロード可能です。プリントアウトしてご利用ください。
mars_sketch.pdf(60KB)

鉛筆

 HB、F、B、2B、3Bくらいのものを、好みに応じて2〜3本用意します。私は、以前ドイツSTAEDTLER社のMARS LUMOGRAPHを使っていましたが、これを使ったからと言って、火星のスケッチがうまく描けるというわけではありません。単なるゴロ合わせにすぎません。

赤いセロファンで減光したライト

 できれば画板に取り付けられるように、クリップ付きのペンライトが良いでしょう(100円ショップで売ってます)。

消ゴム

 なるべく良いものにしましょう。製図用のものが使いやすいと思います。私はドイツSTAEDTLER社のPLASTICERASERと、日本製のトンボMONO PLASTIC ERASERを気分によって(というか、すぐにどこかへ行っちやうんだもの)使い分けていました。聞達っても鉛筆の先っちょにオマケで付いているような消ゴムを使ってはいけません。せっかく苦労して描いたスケッチが台無しになってしまうことがあります。

擦筆(さっぴつ)

 スケッチにポカシを入れるのに使いますが、入手できなけれぼ、特になくても構いません。

スケッチの仕方

 さあ、それではいよいよスケッチをはじめましょう。適当なアイピースを選び視野の中に見える火星の模様を、そのとおりに紙に描けぼいいのですが、これがなかなか大変で、はじめから思ったように描くことはできません。そこで、私がバイブルとして愛読させていただいた、我が国の火星観測の第一人者である佐伯恒夫氏によって書かれた「火星スケッチの上手なとり方」を参考にさせていただきながら紹介していきましょう。

1.火星の顔をジッとながめる

 とにかく、スケッチの前に5分でも1時間でも、火星の顔を気の済むまで眺めます。それから、極冠の大きさ、形をスケッチ用紙に書き込みます。

2.大きな模様の位置を大ざっぱに描く

大きな模様を描く

 つぎに、極冠を基準にして、火星像の欠けている部分の大きさと位置や、大きな模様の形と位置を出来るだけ正確に見極めてから、スケッチ用紙に大ざっぱにサッと描いて、その時の時刻を観測時刻として記録します。

見えているもようが把握できたところで目立つもようの位置をスケッチ用紙にうすく描き込もう(衝から離れた日では火星面が欠けて見えるので欠けぎわも注意して描こう)。この時点を観測時刻として記録しよう。

3.落ち着いて詳細を確かめて描く

模様の細部を描く

 あとは、落ちついて、模様の細部を確かめながら、次々に描いていきます。模様の大きさや位置が正しく描かれているかは、何度も何度も繰り返して確かめておきましょう。

つぎにもようの濃淡を描いてゆく。火星面のもようは淡いものが多いので、濃くなりすぎないよう注意しよう。

4.仕上げ

仕上げ

 実際の火星とよく見比べながら、細部まで仕上げてゆく。シーイングと透明度、使用望遠鏡、アイピースなどを記入しておこう。火星のデータはC.M.は中央経度、DEは中央緯度、Dia.は視直径、Lsは火星から見た太陽黄経を記入しておく。またスケッチ用紙の備考欄に気づいた点は積極的に記入しておくと後日役立つことが多い。

【アドバイス1】スケッチのクセを見いだし、クセを避ける努力を

 人それぞれにクセがあります。極冠の大きいときは大きく描きすぎ、小さくなってきた途端、小さく描きすぎたり、常に極冠を大きく(あるいは小さく)描いたりということが少なくありません。これが表面の模様となると、さらにそれぞれのクセが顕著に現れるようになります。こうしたクセを早く見いだし、意識的にそれを避けるように努力をしましょう。

【アドバイス2】火星の自転で模様は変化する

 火星は24時間強で自転しています。ですから、20分もたてば、自転によって、模様の移動していくようすを知ることができます。ということは、模様の見え方が刻々と変化していくことになります。ですからスケッチは手早く行わなくてはいけません。特に火星面の東側の模様は自転によってどんどん見えなくなってしまいますので、先に描き上げるようにしましょう。また、西の縁からは新しい模様が、次々と現れてきますが、それらを次々に描き込んでいくと、西側の模様が圧縮されたおかしなスケッチになってしまいますので、注意しましょう。

【アドバイス3】3回以上見えたものでなくては描かない

 火星の模様には微妙な濃淡がありますから、チラッと見えたような気がしながら、どうしても自信が持てないということがよくあります。そういったものを片っばしから描き込んでいくと、これもまたおかしなスケッチになってしまいます。少なくとも3回以上確実に見えたものだけを描き込んでいくようにしましょう。

【アドバイス4】雲や霧が模様を変化させる

 火星を見慣れてくると、模様の形や位置を覚えるようになります。それが「この形はこうだったはず」という先入観となって、スケッチに影響を及ぼす事があります。火星面では、雲や霧の発生によって、その模様が形を変えて見えることがありますが、そういった現象を見逃してしまうことにもなりかねません。常に細心の注意を払うようにし、出来るだけ先入観は排除するようにしましょう。

 というわけで、なかなか奥深いものがありますね。今や簡単に写真やビデオで火星が撮影できる時代ですが、だからこそ手描きのスケッチでの火星観測にチャレンジしてみて欲しいのです。火星をスケッチするために火星面を観察することで目が慣れ、表面の微細な模様が驚くほど良く見えるようになります。

 良いスケッチがとれますように・‥・。

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