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分裂した彗星を見よう!〜73P/シュワスマン・ワハマン

シュワスマン・ワハマンはどんな彗星?

珍しい「分裂彗星」

確認されている核33個 「彗星が現れた」というと何か劇的で珍しい現象のように思えるかもしれませんが、彗星は意外と頻繁に登場していて、肉眼で見える物だけでも一年に一回の割合で現れています。しかし、そんな中でも「シュワスマン・ワハマン彗星」は本当に珍しい彗星と言えるでしょう。なぜなら、元々1つだった彗星がばらばらになって、事実上何十個もの「ミニ彗星」となって同時に地球に接近するからです。

ステラナビゲータ Ver.7 snsファイル2006年4月27日現在、確認されている核40個をステラナビゲータVer.7で表示した様子(クリックで拡大)。緑色の矢印が1日の移動量を示す。地球に接近するにつれ、更に多くの核が確認されることだろう。右の星図が再現可能です。[73p.zip]をダウンロードし、[73p.sns]を開きます。

 彗星は、「核」と呼ばれる氷とちりのかたまりが、太陽に接近した際に暖められてちりと共にガスを吹き出すことで尾を伸ばした姿となります。シュワスマン・ワハマン彗星は、この「核」が分裂した状態にあるのです。これまで数多くの明るい彗星が地球に接近しましたが、シュワスマン・ワハマン彗星のようにばらばらになりながら、一群となって姿を見せる彗星はほとんどありませんでした。これこそが、シュワスマン・ワハマン彗星が注目されている理由なのです。

 「分裂彗星」といえば、1994年に木星に衝突した「シューメーカー・レビー第9彗星」があります。この彗星は、木星の重力にとらえられると同時にひきちぎられ、20数個の破片となって相次いで木星に衝突しました。その様子は地球からもはっきりと観測でき、話題を呼びました。さて、数十個の破片となったシュワスマン・ワハマン彗星ですが、地球に大接近することが計算からわかっています。もっとも明るいC核で、地球からおよそ1200万km。これは彗星としては異常な近さです。核の中には、これまで発見された彗星で「もっとも近づいたベスト10」に入るかもしれないものもあるようです。でもご心配なく。シューメーカー・レビー第9彗星のように衝突することはありませんから、安心して特等席から天文ショーを楽しんでください。

シュワスマン・ワハマン彗星の歴史

 シュワスマン・ワハマン彗星は、1930年にドイツでシュワスマン氏とワハマン氏によって発見された彗星です。二人が発見した彗星としては3つ目なので、「シュワスマン・ワハマン第3彗星」と呼ばれることもあります。周期5.4年の短周期彗星ですが、発見直後に地球に接近してから長い間行方がわからなくなっていました。1979年に再発見されますが、依然として暗く目立たない彗星でした。

 そんなシュワスマン・ワハマン彗星に異変が起きたのは1995年の接近時のこと。当初は12等級にしかならないと予想されていた彗星は、9月下旬にバースト(急激な増光)を起こし、10月上旬に5〜6等にまで明るくなったのです。このとき、彗星の核が4個に分裂されているのが確認され、A〜D核と名付けられました。

 彗星核が崩壊するのは、その彗星の最期であることが多いのですが、シュワスマン・ワハマン彗星は活動をやめませんでした。次に戻ってきた2000年には、B核とC核の姿が確認され、さらに新しいE核も発見されました。そして2006年、シュワスマン・ワハマン彗星は大きく地球に接近します。76年間の歴史の中で最大の見せ場となるのは間違いありません。

「星ナビ」6月号は、シュワスマン・ワハマン彗星特集

月刊星ナビ

月刊星ナビ」5月号では「シュワスマン・ワハマン彗星がやってくる!」と題して特集記事を掲載。明るさや観測条件、彗星の見え方、位置推算、星図はもちろん、双眼鏡や望遠鏡を使った観測方法、撮影方法を豊富な写真と図版で詳細に解説しています。1日ごとの彗星の位置が一目でわかる大型星図と、星ナビおすすめの観測機材を持って、透明度の高い夜空へお出かけて下さい。

さらに、6月号(5月6日発売予定)の大特集では、直前情報と最新予報のほか、シュワスマン・ワハマン彗星の分裂の秘密や発見されてからのエピソードも満載。分裂彗星について詳しく知ってから観測すれば、見え方もひと味違うことでしょう。