ステライメージ4、ステラナビゲータ6を使って
彗星をメトカーフコンポジットしてみよう
使う機能:
ステライメージ4:[モザイク合成][デジタル現像][基準点指定][ピクセル情報][減算]
ステラナビゲータ6:[写野角表示][彗星・拡張恒星データの表示]
はじめに
ステライメージのメトカーフコンポジットは、彗星などの移動天体の動きに合わせて撮像するメトカーフガイドを画像処理で行なうものです。
短い露出時間で連続撮像した画像から、ステラナビゲータで移動量を求め、その数値を使ってコンポジットすることで、1枚の画像では確認できなかった彗星の頭部や尾の淡い部分を浮かび上がらせることができます。
作例では、25cmF5反射望遠鏡(焦点距離1250mm)とSBIG ST-9Eで撮像した32の枚画像を使用します。このページの手順通り実際に処理を試したい方は、利用規約をお読みの上、画像をダウンロードしてください。
利用規約:readme.txtをお読み下さい。
ダウンロード: metcalf.zip (圧縮ファイル:10.7MB)
1.画像情報
ステライメージの[画像情報]機能を使って、処理に必要なデータを収集します。
ステライメージで全ての画像を開きます(fig1)。
その中の一枚[2002X5-1250-C-16.fts]を選択して、[画像]メニューの[画像情報]をクリックするとダイアログが開きます(fig2)。
[露出中央]の値[2002年 12月 31日 火曜日 05:26:59]をメモしておきます。
2.撮像時の星図の再現と赤経・赤緯値の取得
ステラナビゲータを使って、撮像時の星図を再現してみましょう。またコンポジットに必要な彗星の運動量(赤経・赤緯の差)もステラナビゲータによって取得できます。
ステラナビゲータを起動し、(赤道座標)をクリックして赤道座標モードにします。
[設定]メニューの[日時]で1-3でメモした「露出中央」の値[2002年 12月 31日 05:26:59]で日時を設定します。
(視野範囲)を0.6度に設定します。
[天体]メニューの[恒星]をクリックしてダイアログが表示されたら[恒星データ]の[拡張(GSC-ACT)]にチェックを入ます。また[等級]の[視野角に連動]にチェックを入れて[17.2等]に設定したら[OK]をクリックします。
ステラナビゲータでの表示を、撮像された画像と同じにしたいので、写野角を表示させます。[天体]メニューの[視野円・写野角]をクリックしてダイアログが表示されたら[写野角]にチェックを入れます。また[カメラ][一覧から選択]にチェックを入れて[ST-9E]を選択。[焦点距離]は[1250mm]に設定します(fig3)。
[天体]メニューの[彗星]をクリックしてダイアログが表示されたら[C/2002 X5 工藤・藤川]選んで[↑]をクリックします。[名称]にチェックを入れておきます(fig4)。
星図上で工藤・藤川彗星をクリックし、[天体情報](fig5)から、赤経・赤緯(視位置)[赤経:18h00m55.7s 赤緯:+29゜59'48" (J2000)]をメモしておきます。
1時間あたりの移動量を求めるため、ステラパッドで時間を1時間進め[2002年 12月 31日 06:26:59]に設定して[天体情報]から赤経・赤緯(視位置)[赤経:18h01m13.5s 赤緯:+29゜56'37" (J2000)]をメモします。
3-8でメモした赤経・赤緯[赤経:18h01m13.5s 赤緯:+29゜56'37" (J2000)]から3-7でメモした値[赤経:18h00m55.7s 赤緯:+29゜59'48" (J2000)]を減算します。
減算値[17.8s -191"]
この値はステライメージでのメトカーフ処理に必要な数値なのでメモしておきます。日時 赤経 (J2000) 赤緯 (J2000) 2002年 12月 31日 06:26:59 18h01m13.5s +29゜56'37" 2002年 12月 31日 05:26:59 18h00m55.7s +29゜59'48" 差 17.8s -3'11" = -191" ステラナビゲータで再現した星図と、ステライメージを並べてみました(fig6)。
3.メトカーフコンポジット
メトカーフコンポジットでの設定に必要な数値がわかったので、実際にコンポジットしてみましょう。
ステライメージの(基準点指定ツール)で基準点を設定します(fig7)。基準点指定ツールで任意の天体を指定した後、[バッチ]メニューの[基準点指定]を実行します。
基準点が全ての画像に設定されたら、[バッチ]メニューの[コンポジット]を実行します。ダイアログ(fig8)が表示されたら、[位置合わせ]を[指定した基準点]にし[合成先]を[新規画像]、[合成方法]を[加算]に設定します。
さらに[メトカーフ法]にチェックを入れ「メトカーフ法・設定」をクリックするとダイアログ(fig9)が表示されます。
[単位時間]を1時間、赤経・赤緯の値を2-8でステラナビゲータで求めた減算値[17.8s -191"]を入力します。天体の位置は2-7でメモしておいた赤緯の値を度の単位に換算して[29.9]を入力します。
[画像情報]の[角度計算]をクリックすると、ダイアログ(fig10)が表示されたら、焦点距離[1250mm]を入力します。[ピクセルサイズ]は[一覧から選択]を選んで[ST-9E]を選択します。設定が終わったら[OK]をクリックします。
ダイアログ(fig9)に戻りますので、[OK]をクリックします。ダイアログ(fig8)に戻ったら、設定は完了です。 [OK]をクリックすると移動量と画像の1ピクセルの角度からズレを自動的に計算してコンポジットが行なわれます。
4.階調の調整
新しい画像ができたら、[階調]メニューの[自動レベル調整]を行ないます(fig11)。
不要な部分を切り取ってから、[レベル調整]を行ないます。▲△マークをマウスでドラッグして、彗星の尾が見えるようにヒストグラムを調整します。
[レベル調整]を行なったら、画像の階調を整えるために[階調]メニューの[デジタル現像]を実行します。これで完成です(fig12)。
まとめ
ステライメージの[画像情報]から、撮影時刻を得てステラナビゲータでの星図による再現ができます。また再現させた星図から撮影した画像の[赤経・赤緯値]等必要なデータを知ることができます。
メトカーフコンポジットでは、画像ファイルのヘッダに記録された、露出時間を参照します。ビットマップ形式など、ヘッダに情報が記録されない画像ファイルは処理できません。またデジタルカメラで撮像したカラー画像の場合、十分なメモリが必要です。