2005年10月30日 火星が地球と最接近
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ステラナビゲータ Ver.7 で作成
宵のころ、東の空からひときわ明るい星が姿を見せるようになってきている。その血のように赤い輝きからも人びとの話題になっているが、これが10月30日に地球に最接近となる火星だ。火星の明るさは-2.3等にもなるので、明るい星の少ない秋の夜空では特に目を引く存在となっており、それは冬の明るい星座が出そろってきてからも変わることはない見え方だ。
火星が前回地球に近づいたのは2003年8月27日のことで、このときは6万年ぶりの超大接近で大きな話題をよんだ。今回はそれから2年2か月ぶりの接近で、前回よりは地球との間に距離があり、見かけの大きさも20.2秒角といくぶん小さい。しかし、これでも火星の大きさとしてはかなり大きい方なので、小望遠鏡でも表面のようすが思いのほかよく見え、観測の興味もわいてくることだろう。火星探査が進んだ時代になったとはいえ、火星接近の話題は天文ファンにとってはまだまだ魅力の大きいものといえる。
火星の表面は、およそ4割ほどが薄暗い模様になっており、しかもその多くが火星の南半球よりに見えている。口径が6cmクラスの小口径望遠鏡でこれらの模様を見るのは、初心者にはなかなかやっかいで難しいものだが、接近時に大シルチスなどの濃い模様が火星の中央あたりにやってきたころには比較的見やすくなる。
今回の接近時の火星面では、前回ほどではないが南極側がいくらかこちらに向いているので、白い南極冠を見ることができる。火星面の模様は、黄雲の発生などのため変形して見えることもあることに注意してほしい。
火星の自転周期は、地球の自転周期に近い24時間40分なので、同じ時刻のころ毎日火星を見ていると、ほぼ似たような模様を見ることになってしまう。しかし約40分という自転周期のズレがあるため、火星面の中央経度は毎日約9度ずつズレていき、約40日たつと再びもとの模様の部分が見えてくることになる。
ところで、火星を長期間観測していると、火星がいくらか欠けていることに気づくことがある。地球から火星の夜側の部分が見えるためで、その欠け方は西矩(7月7日)のころが大きくなる。そんなようすに注目してみるのも興味深いだろう。
火星が次回接近するのは2007年12月19日だが、このときの視直径は15.9秒角、光度は-1.6等と今回に比べるとさえない。今回の火星接近は前回ほどではないとはいえ、貴重な機会といえよう。やや高倍率にして手ばやくスケッチしたり、フィルムやデジタルカメラ、ウェブカメラ、ビデオカメラなど動員して表面のようすをとらえるようにしたい。火星は明るくとらえやすい惑星なのだ。
ポッドキャスト「スターウォッチングエクスプレス」で、「火星大接近」を特集しています。
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