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メシエ天体ガイドメシエ天体の種類と特徴

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それぞれの天体の特徴や見え方について、簡単に説明しておきます。ここで解説するのはそれぞれの分類に関する概略であり、中には同じ種類でありながら、解説と一致しない特殊なものもあります。それらについては、個々の解説中で触れるようにしました。

散光星雲(さんこうせいうん)

散光星雲の分布図散光星雲の分布図

オリオン大星雲(M42)や干潟星雲(M8)に代表される散光星雲は、私たちの住む銀河系の中にあり、不規則な形に広がったガス体からなる星雲で、主に天の川の近くに集中して見られるものです。散光星雲には、輝線星雲(発光星雲)と反射星雲の2種類があります。

輝線星雲は、高温の恒星が放射した強烈な紫外線を受けた星間ガスが発光しているもので、特に水素が放射するHα線が目立ちます(肉眼での観望では目立ちませんが、写真に撮ると赤っぽく写ります)。先のオリオン大星雲(M42)や干潟星雲(M8)、三裂星雲(M20)などがその代表的なものです。

反射星雲は、輝線星雲のものと比べると温度の低い恒星の光を反射して光っているもので、星雲の色はその恒星の色とほぼ同じになります。アンタレスを取り囲む赤い星雲やプレアデス星団(M45)を取り囲む青い星雲などがその代表的なものです。

散光星雲は、他の種類の星雲に比べて見かけ上大きな広がりを持った星雲で、銀河系の中では約1000個ほどの散光星雲が発見されています(メシエ天体に属するものは、そのうちわずかに7個しかありません)。ほとんどは数千光年以内にあり、もっと遠くにも散光星雲があると思われてはいますが、星雲と観測者の間にある多数の恒星や星間物質に遮られてしまい、見ることができません。

また、近いものでも数百光年ほどの距離にあり、100光年よりも近い散光星雲は見つかっていません。プレアデスのまわりの反射星雲(距離410光年)は比較的近くにある散光星雲です。ちなみにオリオン座大星雲までの距離は1500光年、干潟星雲までは3900光年と測定されています。

なお、散光星雲は淡く大きく広がったものが多いので、空の澄んだ所でないと見ることができません。

惑星状星雲(わくせいじょうせいうん)

惑星状星雲の分布図惑星状星雲の分布図

こと座のリング星雲(M57)に代表される惑星状星雲も、銀河系の中に位置している天体です。惑星状というと、太陽系の惑星との関連を想像しがちですが、小さな円盤状に見えるというだけで、関連は何もありません。

惑星状星雲は、高温の中心星を取り巻くように広がったガスが中心星の放射する紫外線によって電離し、特有の輝線を発しているもので、最も強い輝線は500.7nm(ナノメートル)、肉眼でははっきりしませんが、写真に撮ると青緑色に写るものが多いのはこの輝線のためです。

惑星状星雲はかなり遠い距離にあるので、距離を測定することが難しく、測定された値にはかなりの誤差が含まれるものと思われます。比較的近くにある惑星状星雲として、こぎつね座のあれい星雲(M27)がありますが、それでも820光年ものかなたです。リング星雲(M57)は2600光年、おおぐま座のふくろう星雲(M97)は1800光年とされています。

惑星状星雲の実直径は、距離と視直径から計算で求めることが可能ですが、距離の値に誤差を含んでいるので、やはり概略値にすぎず、0.05〜7光年ほどと、大きさはさまざまです。

惑星状星雲の中心付近には、つねに青白い恒星が存在しています。惑星状星雲は中心星と呼ばれるこの星に対してほぼ点対称に広がっていて、星雲がこの星から誕生したことがわかります。

惑星状星雲は視直径の小さいものが多く、双眼鏡でその円盤状の形を見ることができるものはひじょうにわずかです。たいていのものは、位置を確認できる程度と考えたほうがいいでしょう。惑星状星雲を観察するときは、できるだけ大きな口径の望遠鏡を用意したいものです。

惑星状星雲はその形によって次のように分類されています。

I
恒星状に見える
IIa
楕円形で一様に明るく、集光している
IIb
楕円形で一様に明るいが、集光していない
IIIa
楕円形で明るさが一様でない
IIIb
楕円形で明るさは一様でなく、明るいエッジを持つ
IV
環状に見える
V
不規則
VI
異様なもの

銀河(ぎんが)

銀河の分布図銀河の分布図

私たちの太陽系は銀河系(天の川銀河)という大きな星の集団の一部を構成しています。銀河系には約2000億個の恒星や、たくさんの星雲、星団、さらに星間物質と呼ばれるガス体などが含まれています。そして、宇宙には銀河系と同じような星の大集団(これを銀河といいます)が無数にあることがわかっています。これらの銀河はひじょうに遠くにあり、比較的近いアンドロメダ座大銀河でさえ、230万光年もの彼方にあるのです。

銀河はみな大きく、私たちの銀河系で直径10万光年、アンドロメダ座大銀河は直径20万光年以上もあると考えられています。

銀河は、その形から、渦巻銀河、楕円銀河、不規則銀河に分類されています。渦巻銀河は中心核のまわりに恒星・星間物質が渦状に分布しているもので、中心部が棒状の構造になっているものは棒渦巻銀河とも呼ばれます。楕円銀河はほとんど恒星だけが楕円体状に集合しているもの(星雲・星間物質は少ない)、不規則銀河は文字どおり形が不規則なものです。恒星の数が少ない銀河は矮小銀河と呼ばれることもあります。1926年にハッブルによって決められた銀河の形状の分類法を図に示します。

ハッブルによる銀河の分類

天球上における銀河の分布はひじょうに面白く、銀河赤道を中心に、+40゚〜−40゚の範囲にはほとんど存在していません。これは、銀河赤道(つまり天の川)にそって大量に存在する星間物質によって、銀河が隠されてしまうためなのです。

銀河までの距離を初めて測定したのはハッブルで、1924年に、アンドロメダ座大銀河(M31)とさんかく座M33までの距離を約90万光年と発表しました。ハッブルは両銀河中に脈動変光星を発見し、変光周期と光度の関係を利用してその距離を計算したのです。しかし、ハッブルは星間物質による光の減衰を考慮せず(星間物質が確認されたのは1930年代になってからのことです)、また脈動変光星にもいくつかの種類があることを知らなかったため、得られた距離の値には大きな計算誤差が含まれていました。現在ではM31までの距離は230万光年、M33までの距離は250万光年と測定されています。

散開星団(さんかいせいだん)

散開星団の分布図散開星団の分布図

数十個ないし数千個の恒星が不規則に群れ集まった集団を散開星団といいます。現在までに銀河系の中で発見されている散開星団の総数は1000個を超えています。

散開星団は銀河(天の川)平面に数多く密集しているため、以前は銀河星団と呼ばれていたこともありました。

散開星団までの距離は1万光年以内のものが多いのですが、これより遠くにある散開星団も多く存在するものと考えられています。しかし、銀河面(すなわち天の川の周囲)に沿って存在しているために、遠くにあるものは近い恒星や星間物質によって隠されてしまい、見ることができないと考えられています。近距離の散開星団としてはヒアデス星団(距離142光年)、プレアデス星団M45(410光年)、プレセぺ星団M44(590光年)などが有名です。

散開星団は、その密集度によって、a(まばら)からg(密集)の7段階に分類されています。

球状星団(きゅうじょうせいだん)

球状星団の分布図球状星団の分布図

数万ないし数十万個の恒星が球状に密集した集団を球状星団といいます。現在までに銀河系の中で発見されている球状星団の数は130個を超えています。見かけ上は円形で、恒星は中心に近いほど密集しており、周辺部にいくにしたがって徐々にまばらになっています。球状星団をよく調べると、完全な球形ではなく、わずかに歪んだ楕円体であることが多いのですが、これは球状星団全体が自転運動をしているためだと言われています。

球状星団に含まれている恒星の正確な数はわかりません。中心付近にはたくさんの星が密集しているので、写真から数を特定することは不可能で、一般には実光度をもとに質量を推定し、質量の値から恒星数を推定する方法で恒星数が求められています。たとえば、M22(いて座)は約7万個、M13(ヘルクレス座)は約50万個の星を含むとされています。

これらの恒星は、球状星団の中心に対して点対称をなして分布しています。球状星団内の恒星は、青白色から赤色までさまざまですが、明るい恒星はすべて赤色で、これより2〜3等級暗い星は黄色か白色となっていることが多く、球状星団を写真に撮ると赤味を帯びて写ります。

球状星団内には変光星が数多く見つかっていますが、特に有名なのがM3(りょうけん座)で250個以上の変光星が知られています。

銀河系内の球状星団までの距離は、一般に2万〜5万光年と言われています。なお、球状星団は天球上に均一に分布しているのではなく、銀河(天の川)の中心方向(いて座)に密集しています。その中心は赤経17h30m、赤緯-31゚、これより90゚以上離れているものはごくわずかで、その半数以上は30゚以内の空域に固まっています。なお、メシエ天体の球状星団で唯一、M54だけは銀河系に属さない球状星団です。

球状星団はその密集度に応じて、密なものから順にI〜XIIの12段階に分類されています。

球状星団は、一般に視直径の小さいものが多く、小口径望遠鏡で楽しめるものは、ほんのわずかしかありません。

超新星残骸(ちょうしんせいざんがい)

超新星残骸はその名のとおり、質量が太陽の数倍もある恒星が、その一生の終わりに大爆発を起こし、超新星として輝いた後に残された爆発の残骸です。メシエ天体には、かに星雲(M1)しかありません。M1の場合、爆発による衝撃波は毎秒1000km以上の高速で四方八方に広がっています。

その見え方から、惑星状星雲に分類されることもあります。