インドの月探査機「チャンドラヤーン2号」、打ち上げ成功
【2019年7月23日 インド宇宙研究機関】
7月22日14時43分(現地時間。日本時間18時13分)、インドの月探査機「チャンドラヤーン2号(Chandrayaan-2)」が、同国サティシュ・ダワン宇宙センターからGSLV-Mk IIIロケットで打ち上げられた。当初は7月15日に打ち上げ予定だったが、直前でヘリウムガスの漏れとみられる不具合が見つかり実施が延期されていた。
ロケットは正常に飛行し、打ち上げから約20分後、探査機が予定の軌道でロケットから切り離され、打ち上げは成功した。探査機の切り離し直後までの様子は、ロケットに搭載されていたカメラにもはっきりととらえられた(下記〈関連リンク〉参照)。
チャンドラヤーン2号は約1か月かけて月を目指し、8月下旬に月周回軌道へと入る予定だ。その後、9月7日に、まず着陸機「ヴィクラム(Vikram)」を月の南緯70度付近にある2つのクレーター「マンチヌスC」と「シンペリウスN」の間の台地へ軟着陸させる。ヴィクラムの名前は、インド宇宙工学の父と呼ばれる物理学者でISRO初代所長のヴィクラム・サラバイ(Vikram Sarabhai)に由来するものだ。無事に軟着陸すれば、旧ソ連、アメリカ、中国に次いで世界4番目の成功となる。
続いて、ヴィクラムから探査車「プラギャン(Pragyan)」(サンスクリット語で知恵や英知の意味)を送り出す。ヴィクラムとプラギャンは、月面上の昼1日(地球の約14日間)をかけて、着陸地点付近の月面を調べる。一方、周回機は、上空約100kmから約1年にわたって探査を行う。
チャンドラヤーン2号のミッションでは、地形や月震、鉱物の同定と分布、地表の化学組成、表土の熱物理学的な特性、月の薄い大気の組成を調べるための観測機器が準備されている。これらの機器により、月の表面近傍のプラズマ環境や月震活動の測定、水分子の分布などが調査される予定である。
とくに水に関しては、月の南極は注目の領域だ。南極には太陽光がずっと当たらない影のままの領域(永久影)が北極よりもはるかに多くあり、その周りに水が存在している可能性がある。2008年に打ち上げられた探査機「チャンドラヤーン1号」によって、月面における水分子の存在証拠が発見されているが、その水の起源に迫るためには、月面や表面下、外気圏(ごく薄い大気の層)における水分子の分布範囲を詳しく調べる必要がある。チャンドラヤーン2号のデータから手がかりが得られるかもしれない。
また、南極域には非常に低温の領域である「コールド・トラップ」にあたるクレーターが存在しており、太陽系初期の歴史がそこに化石のように残されていると考えられている。
月の南極域を調べる世界初の探査機となるチャンドラヤーン2号は、インドのみならず人類への利益や、月より遠い天体を目指す将来のミッションの推進につながる発見をもたらすと期待されている。
〈参照〉
〈関連リンク〉
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