黒色塗料による人工衛星の減光、むりかぶし望遠鏡で検証

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石垣島天文台のむりかぶし望遠鏡とMITSuMEの観測で、スターリンク衛星に施された黒色塗装が太陽光の反射量を通常の半分に抑えるという結果が発表された。

【2020年12月11日 石垣島天文台

米・スペースX社は、高性能かつ低コストの衛星インターネットサービスの提供を目的とした巨大通信衛星網「スターリンク」を実現するため、2019年5月に第1回目として60機の衛星を打ち上げた。現時点で900機近くが運用中であり、2020年代中ごろまでには総計約4万2000機にも達する予定である。

通信サービスとしてのメリットは計り知れない一方、上空約550kmの高度で地球を周回しながら太陽光を反射するスターリンク衛星は、天体観測や景観に望ましくない影響を及ぼす。これに対して国際天文学連合や日本の国立天文台などからは懸念の声明が発表されていた。

これを受けてスペースXは、表面に黒色塗装を施した「ダークサット」(STARLINK-1130)を試験機として2020年1月に打ち上げた。世界の研究機関でスターリンク衛星の明るさ(等級)の調査が行われており、たとえばg'バンドフィルター(緑色)でダークサットが約7.5等級、通常型のSTARLINK-1113で6.6等級と、いずれも観測的影響を無視できない、という報告例がある。

通常のスターリンク衛星とダークサット
通常のスターリンク衛星(右)とダークサット(左)のイラスト(提供:SpaceX)

今回、国立天文台・石垣島天文台の堀内貴史さんを中心とした研究チームは、石垣島天文台の口径105cm「むりかぶし望遠鏡」と50cm反射望遠鏡「MITSuME」を用いて、ダークサットおよびSTARLINK-1113の飛跡を3色(g'バンド:緑、Rcバンド:赤、Icバンド:近赤外線)で撮影した。多色での同時観測により、黒色塗装による具体的な効果を詳細に検証することが目的だ。

スターリンク衛星の飛跡
スターリンク衛星の飛跡(提供:国立天文台)

撮影結果を調べたところ、ダークサットとSTARLINK-1113は共に、長波長ほど明るくなる傾向にあることが確認された。また、衛星の3色の明るさに太陽光の熱放射と反射のモデルを適用したところ、ダークサットの表面の反射率はSTARTLINK-1113の約半分であることがわかった。研究チームでは、ダークサットの表面塗装の効果が有効であると結論付けている。