NASA次期太陽系ミッションに2つの金星探査を選定
【2021年6月8日 NASA JPL】
NASAの科学ミッションシリーズ「ディスカバリープログラム」の一環として、科学的価値や実現性の観点から「ダビンチ+(DAVINCI+)」と「ベリタス(VERITAS)」という2つの金星探査計画が選ばれた。金星がどのようにして現在のような灼熱の世界となったのかに迫る探査を実施する計画で、2028~2030年までに打ち上げられる予定である。
「私たちが金星についてほとんど知らないという事実は驚くべきことです。しかし、これらのミッションによる成果を合わせれば、空に浮かぶ雲から表面に存在する火山、さらに惑星内部の中心核についての情報が得られます。その成果は、惑星の再発見のようなものとなるでしょう」(ディスカバリープログラムサイエンティスト Tom Wagnerさん)。
1992年に創設されたディスカバリープログラムでは、これまでに水星探査機「メッセンジャー」や小惑星・準惑星探査機「ドーン」、系外惑星探査衛星「ケプラー」など20以上のミッションや装置開発が行われてきた。今回のダビンチ+とベリタスは、木星の衛星イオ探査計画「IVO」、および海王星の衛星トリトン探査計画「トライデント」を含めた第9回コンペの最終4案から採用されたものとなる。
ダビンチ+
金星の大気の形成と進化に迫るため、探査機が厚い大気内へ突入して降下し、その成分を正確に測定する。得られた化学組成などをもとに、過去金星に海が存在していたかどうかや、暴走的な金星大気の温室効果がなぜ引き起こされているのかといった謎の解明を目指す。
さらに、金星の北極の近くに位置する「イシュタル大陸」の東部やその周辺に広がる、リッジ状構造と溝が集中して網目状となっている地帯「テッセラ」の高解像度画像を初めて取得する。テッセラは地球の大陸に似た地形で、金星におけるプレートテクトニクスを示唆しているのではないかと考えられている。
ダビンチ+の探査により、太陽系や他の恒星周囲に存在する岩石惑星の形成や進化について理解が進むことが期待される。
ベリタス
金星表面からの赤外線放射マップを作成し、ほとんど知られていない表面の岩石の種類を明らかにし、火山活動によって大気中へ水蒸気が放出されているかを調べる。さらに、金星周回軌道上から合成開口レーダーを用いて、ほぼ全球の地形の標高を調べて3D地形図を作成し、プレートテクトニクスの有無、火山活動が現在も起こっているかどうかを確認する。
こうした探査により、金星に存在する地形の歴史を明らかにし、金星が地球と非常に異なる進化をたどった理由の解明に迫る。
なお、今回のミッションの探査機に搭載されるデモンストレーション技術として、紫外線から可視光線の波長の光に対応したコンパクトな分光器「CUVIS」と、深宇宙原子時計「Deep Space Atomic Clock-2」が選ばれている。
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