謎多き天の川銀河の中心分子雲帯に迫る
【2016年3月3日 CfA】
天の川銀河の中心には、太陽の4百万倍の質量を持つブラックホールが存在している。その周囲には差し渡し8光年のドーナツ状構造があり、さらにその周りに、700光年ほどの長さに伸びた「中心分子雲帯(Central Molecular Zone; CMZ)」と呼ばれる領域がある。
銀河全体に存在する濃いガスのうち、ほぼ8割はこのCMZに存在するもので、その総量は太陽質量の数千万倍に相当する。CMZには巨大な分子雲や明るい星を作る星団などが見られるが、通常であれば新しい星が作られるはずの濃い分子雲が不気味なほど不毛であることや、秒速数百kmという超音速で移動するガスが存在することなど謎が多い。
CMZはどこから来たのだろうか。他の銀河内になら似たような領域が存在するかもしれないが、天の川銀河内には似たような領域はどこにもない。また、分子ガスの動きに対して構造はどのようにして保たれており、動きは構造の進化をどのように制御しているのだろうか。
米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのCara Battersbyさんらの研究チームは、豪・モプラ電波望遠鏡を使って、CMZ中に存在するイソシアン酸(HNCO)など3種類の星間分子を調べた。これらの星間分子によって、衝撃波を受けたガスから静止している物質に至るまで、CMZ中の物質の状態を広範囲に調べることができるからだ。
その結果、以前の研究成果と同様、(理由はわかっていないが)CMZはブラックホールを中心に集中しているのではなく、むしろ中心からずれていることがわかった。また、ガスの速度が至るところで超音速であることも確認された。CMZを横切るような2つの大きな物質の流れも確認され、銀河の渦状腕のようなものかもしれないことが示唆されている。
さらに、CMZ内ですでに知られていた、超新星爆発の結果であると考えられてきた殼のような単一の領域が、実は互いに物理的に無関係な複数の領域である可能性も示された。巨大な雲は独立したものと思われていたが、実はスケールの大きな流れが拡がったものだという。
今回の成果は、銀河の複雑な環境を明らかにする第一段階となるものだ。研究者たちは今後より大規模にCMZのガスの動きを調べ、コンピュータシミュレーションで動きをモデル化する予定である。
〈参照〉
- CfA: The Milky Way's Central Molecular Zone
- MNRAS: Molecular gas kinematics within the central 250 pc of the Milky Way 論文
〈関連リンク〉
- Mopra Telescope: https://www.narrabri.atnf.csiro.au/mopra/
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