惑星を飲み込んだ赤色巨星

【2012年9月3日 Phys.Org

過去に惑星を飲み込んだ痕跡の残る赤色巨星と、生き残った惑星が初めて見つかった。わたしたちの太陽系の内惑星も、数十億年後に同じ運命をたどるかもしれない。


ホビー・エバリー望遠鏡

ホビー・エバリー望遠鏡。クリックで拡大(提供:Marty Harris/McDonald Obs./UT-Austin)

BD+48 740と名付けられた赤色巨星(ペルセウス座の9等星)は太陽より年齢が高く、11倍もの直径を持つ。その周りに、非常に細長い楕円軌道を持つ大質量惑星が見つかった。米・ペンシルベニア州立大学のAlexander Wolszczan氏らの国際研究チームは、恒星の進化と惑星を研究する目的で米・マクドナルド天文台のホビー・エバリー望遠鏡で観測を行っており、その際に主星の奇妙な化学組成や生き残った惑星の異常な軌道など惑星が飲み込まれた証拠を発見した。

「恒星のスペクトルを詳細に分析した結果、異常に多くのリチウムが含まれていました。リチウムは、ビックバン後の初期宇宙で作られた珍しい物質の一つです」(ポーランド、ニコラウス・コペルニクス大学の Monika Adamow氏)。恒星の中のリチウムはすぐ破壊されてしまうので、BD+48 740のような高齢星で大量のリチウムが見つかるのは非常に珍しいことなのである。

「ビックバン以外の要因で、いくつかの特別な場合に恒星の内部でリチウムが作られることが理論研究で示されているます。BD+48 740の場合は、惑星サイズの天体が恒星に飲み込まれ、その過程で温度が上昇し、リチウム生成が触発されたのかもしれません」(Wolszczan氏)。

また、この星には木星の1.6倍以上の質量を持ち細長い楕円軌道を運動する巨大惑星がある。「このような軌道の惑星系が高齢の恒星で見つかるのはとても珍しいことです。この惑星の軌道は今まで見つかったものの中で最も細長くつぶれています」(同大学のAndrzej Niedzielski氏)。

こういった変わった軌道の重要な要因の一つは惑星間の重力的相互作用だ。主星が巨星になる前に別の惑星が主星に飲み込まれ消失し、その影響で大質量惑星の軌道がブーメランのような楕円になったと考えられる。

「惑星が主星に飲み込まれる現象は比較的短い時間で起こるため、リアルタイムでとらえることは困難ですが、主星の化学的変化からそのような出来事を推論することはできます。惑星の軌道がつぶれていることや大量のリチウムを含んだ赤色巨星は、天文学的に言えばごく最近、惑星が飲み込まれたことを示す証拠です」(スペイン、マドリード自治大学のEva Villaver氏)。

「太陽系の内惑星にも飲み込まれた惑星と同じ運命が待っているかもしれません。50億年後には太陽も赤色巨星になり、地球の公転軌道よりも大きく膨張するからです」(Wolszczan氏)。