CR7だけではなかった、初期宇宙に非常に明るい複数の銀河
【2016年6月29日 RAS】
ビッグバンから約1億5000万年後の初期の宇宙には中性水素ガスが満ちており、高エネルギーの紫外線はまっすぐ進めなかった。その後、宇宙で一番最初に誕生した星々からの紫外線によって中性水素ガスが電離される「宇宙再電離」が起こり、紫外光が自由に宇宙を動けるようになったと考えられている。再電離は、水素とヘリウムから成る比較的単純な初期宇宙と、大きなスケールで見れば透明で重元素で満たされた現在の宇宙との境目の時期だ。
2015年に英・ランカスター大学のDavid Sobralさんたちの研究チームは、再電離期に存在する非常に明るい銀河であり、おそらく宇宙で一番最初に誕生したと思われる星が存在する銀河の初の例である「CR7」を発見した(参照:アストロアーツニュース「初期宇宙に明るい銀河「CR7」発見、第一世代星の証拠も検出」)。
同チームはCR7と同様の銀河「MASOSA」も発見した。さらに日本の研究チームが発見した銀河「ヒミコ」も合わせると、同様の天体の数が予測以上に大きいことが示唆された。
そこでSobralさんたちは、ハワイのすばる望遠鏡やケック望遠鏡、チリの超大型望遠鏡VLTを使った観測を行い、CR7やMASOSAなどと同種の天体を発見した。新たに見つかった銀河はすべて、周囲に大きな電離ガスの泡が広がっているようだ。「最初期の銀河の星から放射された大量の紫外線が、周囲の水素ガスをバラバラにしたに違いありません。再電離が終わり天体が見えるようになってからも、その周囲に大量の不透明な物質があった証拠が残されているのでしょう」(Sobralさん)。
現在のところ5つの明るい天体の存在が確認されており、今後さらに見つかると予測されている。CR7は独りぼっちではなく、数多く存在する銀河の「チームの一員」かもしれないのだ。宇宙再電離や宇宙で最初の銀河、そうした銀河に存在するかもしれないブラックホールなどの研究が進むことが期待される。
〈参照〉
- RAS: CR7 is not alone: a team of super bright galaxies in the early Universe
- MNRAS: Identification of the brightest Lyα emitters at z = 6.6: implications for the evolution of the luminosity function in the reionization era 論文
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ南天天文台(ESO): http://www.eso.org/
- すばる望遠鏡: http://www.subarutelescope.org/
- W. M. ケック天文台: http://keckobservatory.org/
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