巨大な低温ガス雲に埋もれ育つ大きな胎児

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100億光年以上彼方の「クモの巣銀河」の電波観測から、この天体が低温で高密度の分子ガスの巨大な集まりの中にあり、そこから材料を得て巨大銀河へと成長していることが明らかにされた。

【2016年12月7日 NRAO

スペイン・宇宙生物学センターのBjorn Emontsさんたちの国際研究チームは、オーストラリア望遠鏡コンパクト干渉計(Australia Telescope Compact Array;ATCA)とアメリカ国立電波天文台カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)を用いて、うみへび座の方向100億光年以上彼方にある「クモの巣銀河」を観測した。

クモの巣銀河は、実際には単独の銀河ではなく複数の原始銀河が集まったものだ。銀河からの一酸化炭素ガスを電波観測することで、はるかに検出が困難な水素分子が大量にあることを知ることができる。

クモの巣銀河の想像図
クモの巣銀河の想像図。(白・ピンク)原始銀河、(青)一酸化炭素ガスの位置(提供:ESO/M. Kornmesser. This figure is licensed under CC BY 4.0 International License.)

観測から、分子ガスの総量は太陽質量の1兆倍と見積もられ、ガスの温度は摂氏マイナス200度と予想外に冷たいことが明らかになった。また、ATCAのデータからはガス全体の広がりが天の川銀河の大きさの3倍もあることがわかり、VLAの観測からはガスのほとんどが原始銀河内ではなく原始銀河の間に存在していることが示された。

「中心にある巨大銀河は、新しい星の材料となる冷たいガスのスープを飲みながら成長しているようです。周囲の小銀河を取り込んで大きくなる近傍の巨大銀河とは、異なった成長の仕方です」(Bjornさん)。

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