134億年前の生まれたての銀河の知られざる性質

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134億年前の初期宇宙に存在する銀河がアルマ望遠鏡などで観測され、激しい星形成や重元素量の極端な少なさなど、これまでほとんど手がかりのなかった原始銀河の性質が明らかにされた。

【2025年1月20日 アルマ望遠鏡

近年の観測では、ビッグバンから数億年後の初期宇宙に存在する遠方の銀河が見つかっている。その中には理論の予測と矛盾するような明るいものも含まれていて、爆発的な星形成などが原因として考えられている。遠方の明るい銀河を調べると、初期宇宙における銀河形成やブラックホールと銀河の共進化などについて、重要な情報が得られるはずだ。

遠方銀河やその候補天体を確認し、物理的な性質を解明するには、赤外線の波長域で高い感度を持ち、広範囲の赤外線の波長に対応しているジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による分光観測が有効だ。また、アルマ望遠鏡も132億光年彼方の銀河の観測で酸素を検出するなど、特定の原子や分子が放射する輝線の観測で成果を挙げている。

国立天文台のJorge Zavalaさんたちの研究チームは両望遠鏡を用いて、JWSTが2022年に発見した原始銀河「GHZ2(GLASS-z12)」を観測した。この銀河はちょうこくしつ座の方向にあり、パンドラの銀河団と呼ばれる銀河団Abell 2744の奥に位置している。

Abell 2744とGHZ2
「パンドラの銀河団」Abell 2744。2つの囲みのうち「2」のほうが、今回の研究対象となったGHZ2。画像クリックで表示拡大(提供:NASA, ESA, CSA, Tommaso Treu (UCLA)

アルマ望遠鏡の観測では2階電離した酸素原子の輝線が検出され、GHZ2の赤方偏移がz=12.333であることが確認された。つまり、この原始銀河はビッグバンから3.5億年しか経っていない、今から134億年前の初期宇宙に存在していることになる。

一方、JWSTの観測では複数の輝線が検出され、この銀河の星形成活動がこれまでに知られていた他の遠方銀河に比べてとくに激しいことが突き止められた。また、金属量(水素よりも重い元素の相対量)が他の銀河に比べて極端に低いことや、普通の銀河にはあまり存在しないような若い高温の大質量星が多いことも明らかになった。

酸素輝線の観測画像と分光データ
酸素輝線の観測画像と分光データ(提供:J. Zavala et al.)

アルマ望遠鏡の観測からは、GHZ2の質量が太陽の数億倍で、その質量の大半が約300光年という狭い領域に詰まっていることもわかった。Zavalaさんたちは金属量や星の数密度のデータをもとに、今後GHZ2が球状星団に進化するか、または大質量銀河の中心核となるのではないかと考えているが、今後の観測やシミュレーション研究によって妥当性を検証する必要がある。

「この研究成果は初期宇宙における原始銀河の研究の、長き挑戦の末にようやく可能になったものです。アルマとJWSTを組み合わせることで得られた複数の輝線の情報を使って、最遠方の生まれたての銀河の性質を垣間見ることができました」(スウェーデン・カルマー大学 Tom Bakxさん)。