球状星団に含まれる若い星々の材料は星団の外から
【2016年2月1日 Northwestern University】
中国・北京大学のカブリ天体物理研究所(KIAA)のChengyuan Liさんたちの研究グループは、複数の年齢層が見られる球状星団の星々について、若い星の材料が星団外部に由来するとみられることを初めて示した。星団内で初期に誕生した星が年老いていく際にガスを放出し、それが次世代の星の材料となるという従来の考え方とは、対照的なものだ。
研究グループはハッブル宇宙望遠鏡の観測データから、天の川銀河の伴銀河である大マゼラン雲・小マゼラン雲にある3つの球状星団に含まれる星の年齢を調べた。星の年齢は色と明るさから推定することができる。ある星団では、宇宙年齢に匹敵するほど古く年老いた星々のほかに、約8億9000万歳と約4億5000万歳という2つの若い世代の星々が存在していた。
こうした若い星々の材料となるガスや塵は、球状星団に最初からあったものではなく、星団内で一生を終えた星々から放出されたものでもなく、星団が銀河内を動きながら外部から取り込んだものだというのだ。外部提供説は半世紀以上も前に提唱された理論だが、データ分析と計算の結果、実際に理論どおりのことが起こりうることが示されたのである。
「球状星団は、これまで考えられていた以上にはるかに複雑ということです。外から取り込んだガスによって星団で新たな星が誕生するという説の実現可能性を、ついに示せました」(KIAA Richard de Grijsさん)。
〈参照〉
- Northwestern University: Stellar parenting: Making new stars by 'adopting' stray cosmic gases
- Nature: Formation of new stellar populations from gas accreted by massive young star clusters 論文
〈関連リンク〉
- HubbleSite: http://hubblesite.org/
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