衛星イオの火山噴火口エリアに見られる溶岩の波
【2017年5月11日 Barkeley News】
木星の衛星「イオ」は太陽系で最も活発な火山活動が見られる天体である。そのなかでも一番活動が激しいのは、北欧神話の神「ロキ」の名が付いた「ロキ・パテラ(Loki Patera)」という、差し渡し約200km、広さ2万平方km以上にも及ぶ火山噴火口エリアだ(パテラはお椀状の噴火口を表す言葉)。
ロキ・パテラは400日から600日ごとに明るくなる様子が観測されている。初めてイオの明るさの変化が発見されたのは1970年代で、1979年に探査機「ボイジャー」1号と2号による探査から、明るさの変化の理由は衛星の火山活動であることがわかった。しかし、そもそもロキ・パテラの明るさが変わる原因については、2000年前後に探査機「ガリレオ」が詳細な画像を取得したもののはっきりしておらず、議論が続いている。
米・カリフォルニア大学バークレー校のKatherine de Kleerさんたちの研究チームは、2015年3月8日に起こった衛星「エウロパ」がイオの前を通過して隠す現象を利用して、ロキ・パテラを詳しく調べた。エウロパは水の氷で覆われているため、赤外線で観測するとほとんど太陽光を反射しない。そのため、イオの火山が発する熱を正確に分離できたのである。
赤外線観測データから、ロキ・パテラの一端から別の端に向かって、表面温度が徐々に高くなっていくことがわかった。これは、一日あたり1kmほどの速さで西から東へと動く2つの溶岩の波が、このエリアの溶岩湖を転覆させている(表面と地下とが入れ替わる)らしいことを示す結果だ。こうした現象は、ロキ・パテラの明るさが変化する原因として考えられてきたことである。
観測された温度の分布と、地球上の火山の研究をもとにしたマグマの温度や冷却に関する情報から、いつ新しいマグマが表面に露出したのかを計算したところ、2つの波が始まる西の端では観測の180日から230日前、2つの波が合流する東の端では75日前となった。溶岩湖の転覆のタイミングや速度と一致する結果である。
de Kleerさんたちは、次回のエウロパによるイオ食の観測にも意欲的だ。だがその機会は2021年まで待たねばならない。
〈参照〉
- Barkeley News: Waves of lava seen in Io's largest volcanic crater
- Nature: Multi-phase volcanic resurfacing at Loki Patera on Io 論文
〈関連リンク〉
- アストロアーツ:
- 【特集】木星とガリレオ衛星(2017年)
- 投稿画像ギャラリー: 2017年 木星
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