10cmの望遠鏡でイオの火山活動の変化を観測

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口径わずか10cmの小型望遠鏡による観測から、2年にわたるイオの火山性噴出の変化が明らかになった。イオの火山活動の長期観測は珍しく、その観測に特化した望遠鏡ならではの成果だ。

【2024年10月25日 東北大学

木星の第1衛星イオでは1979年に探査機「ボイジャー1号」によって、地球以外の天体としては初めて火山活動が確認された。火山活動は木星の潮汐力により引き起こされているもので、これまでに見つかっている400以上の活火山からは硫黄などを含むガスが放出されている。

ボイジャー1号がとらえたイオ
「ボイジャー1号」が撮影したイオ。最も活動の激しい火口「ロキ・パテラ(Loki Patera)」からの噴出がとらえられている。青い色は、火山性ガスに含まれる二酸化硫黄ガスが宇宙空間で凝縮・凍結したことによるもの(提供: NASA/JPL-Caltech/USGS

イオの火山で発生したガスはイオの重力圏を脱出してイオや木星の周辺に広く分布し、木星の周囲でナトリウム雲となって存在している。この雲は、ナトリウム原子のスペクトルに見られる代表的な輝線であるナトリウムD線の波長で淡く発光している。発光は地上からでも観測でき、イオの火山活動に応じて変化するとみられている。

イオの火山性ガスが木星周囲に広がっていく再現図
イオの火山から発生したガスが流出して木星周囲に広がっていく様子の再現図(提供:東北大学リリース)

東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センターの米田瑞生さんたちの研究チームは、このナトリウム雲の発光に着目し、1999年以来継続的に地上から観測を続けている。観測に用いられているのは米・ハワイのマウイ島ハレアカラ山山頂で運用されている、口径わずか10cmの小型望遠鏡だ。同望遠鏡はナトリウム雲の発光観測に特化していて、木星本体の強烈な光を遮断しつつ、木星周囲の広い範囲の発光を観測できるようになっている。

米田さんたちは今回、これらの観測データの解析から、2017年から2019年にかけてイオで火山活動が起こったり収束したりしていたことを示唆する結果を明らかにした。小型望遠鏡でイオの火山爆発が確認されたのは初めてのことではないが、2年間にわたって火山活動が変化し続ける様子を観測できたことは貴重な成果だ。

木星の周囲に広がるイオの火山性ガスの様子
木星の周囲に広がるイオの火山性ガスの様子とその発光強度。木星半径の100倍以上まで発光が見られ、上(2018年2月)に比べて下(同4月)のほうが発光領域が拡大していること、強度が強くなっていることがわかる。黒い帯は木星を隠したもの(出典:Yoneda et al.