10例目、木星表面の閃光現象がとらえられる

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8月末、木星表面で約1年10か月ぶりとなる閃光現象が発生し、国内のアマチュア天文家によって観測された。

【2023年9月14日 星ナビ編集部

解説:有松 亘さん(京都大学)

8月29日1時45分(日本時間)に木星表面で、小天体の衝突に伴うと推定される閃光現象が発生した。この現象は日本国内の複数のアマチュア天文家によって観測された。2010年に地上観測で初めて発見されて以降、確認された閃光は今回で10例目であり、2021年10月の9例目以来、約1年10か月ぶりの発見である。本稿執筆時点で、国内で観測していた11名のアマチュア観測者から閃光の報告を受けており、このうち動画で記録に成功した9名からは撮影データの提供も受けている。これは過去に確認された木星の閃光において最大の同時観測数である。

いずれのデータでも、継続時間は2秒程度だが極めて明るく輝く閃光が記録されていた。私たちの実施した初期解析によれば、ピーク時の閃光の輝度はこれまでに観測された同様の閃光と比較して数倍から10倍ほど明るいと推定される。過去に地上から観測された木星の閃光は、直径にして5mから30mのサイズを持った天体が木星大気に突入して発生したと考えられている。つまり今回、これまでよりも大きな天体が衝突した可能性がある。

衝突閃光
閃光が発生した瞬間の木星。アマチュア観測家5名からご提供いただいた動画データを使用して作成。画像クリックで表示拡大((c) 有松 亘(京都大学)、石橋 力、大杉忠夫、大田 聡、関根正道、冨田安明)

筆者が主宰するPONCOTSプロジェクトでは、2021年10月に発見した木星閃光の観測データを基に、こうした閃光に関する新たな解析手法を開発した。これにより、これまで不定性が大きかった衝突天体の質量およびサイズをかつてないほど高い精度で測定することに成功した。さらに、閃光の光度の時間変動から衝突した小天体の衝突角度や物性についても明らかにする手法も確立している。

木星閃光の発生頻度は極めて小さく、熱心なアマチュア観測者の皆さんの協力がますます重要である。今回の閃光も含め、木星閃光の観測情報は筆者のX(旧Twitter)アカウント@OASES_miyakoまたはEメール:arimatsu.ko.6x@kyoto-u.ac.jpにお送りいただきたい。なお、星ナビ2023年11月号(10月5日発売)でもこの閃光現象について解説記事を掲載する。

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