探査機「ジュース」、世界初の月・地球ダブルスイングバイを実施

このエントリーをはてなブックマークに追加
木星氷衛星探査機「ジュース」が日本時間8月20日と21日にそれぞれ月と地球へ接近飛行し、世界初のダブルスイングバイを成功させた。

【2024年8月27日 ヨーロッパ宇宙機関

昨年4月に打ち上げられた木星氷衛星探査機「ジュース(JUICE)」は、日本時間8月20日6時15分に月の上空約700kmを通過する月スイングバイを実施して地球方向へ進路を変更した。続いて、その約25時間後の21日6時56分にアジア・太平洋の上空6840kmを飛行する地球スイングバイを行い、世界初のダブルスイングバイを成功させた。このダブルスイングバイによって、ジュースは次に惑星フライバイを実施する金星へ向かう軌道へ入った。

ジュースがとらえた月など
月への最接近直後に2台のジュースモニタリングカメラ(JMC;Juice Monitoring Camera)がとらえた画像。(左)JMC1による画像。クレーターなどの月面の地形が鮮明にとらえられている、(右)JMC2による画像。月や探査機の一部に加えて、地球が画像中央上部の探査機背後(太陽光の反射によるゴーストとして写り込んでいるぼんやりとした青い塊)のすぐ上に三日月に縁取られた暗い円としてとらえられている。画像クリックで拡大表示(提供:ESA/Juice/JMC; acknowledgement: Simeon Schmaus & Mark McCaughrean (Image processing)

スイングバイは探査機の加速や減速のほか、燃料を節約して航行するための軌道修正にも使われる。木星系は地球から平均約8億kmの距離にあり、直接たどり着くには60tもの推進剤が必要だ。また、到着後に減速して木星周回軌道へ入るためにも莫大な推進剤が必要となる。JUICEミッションチームは20年もの歳月をかけて、探査機が適切な速度と方向へ飛行して搭載した約3tの燃料を節約しながら木星系に到着できるように、複雑な惑星スイングバイを利用した航行計画を立てた。

ジュースがとらえた地球
地球へ最接近中にJMC1がとらえた地球。(左)8月21日6時48分撮影、(右)8月21日7時09分撮影。画像クリックで拡大表示(提供:ESA/Juice/JMC(左)(右)

「今回のダブルスイングバイは、自分が運転する車と道路脇の隙間がほんの数ミリしかないとても狭い道を、最大に加速して突き進むようなものでした。月スイングバイは完璧で全てが滞りなく進み、ジュースが地球近くに戻ってきたのを見て感激しました」(JUICE探査機運用マネージャー Ignacio Tancoさん)。

「非常に正確なナビゲーションのおかげで、ダブルスイングバイ用に確保した推進剤の使用がごく一部で済みました。今後予定外で燃料が使えたり、木星系に到着した後のミッションを延長できたりといった余裕につながります」(Tancoさん)。

ジュースはダブルスイングバイ時に、10個の観測機器のうち8つを稼働させて観測データを収集した。「得られたデータを使って観測機器の動作を徹底的に調べて、木星系到着に向けた準備ができます。実際の観測ターゲットに対して観測機器がどのように反応するかを理解する上で、地球や月、その周辺環境は理想的な観測対象です」(ジュース科学サイエンティスト Claire Vallatさん)。

この後、ジュースは2025年に金星フライバイ、2026年と2029年に地球フライバイをそれぞれ実施して、2031年に木星系に到着する。

〈参照〉

〈関連リンク〉