2017年の木星は4月〜7月ごろに観察シーズンを迎えます。マイナス2等級と明るいので町中でも簡単に見つけられ、おとめ座のスピカと並ぶ様子がよく目立ちます。時おり月も接近し、3天体の共演も楽しめます。
木星を双眼鏡で観察すると、木星の周りを巡る4つのガリレオ衛星が見えます。日々並び方が変化する様子は見ものです。天体望遠鏡を使うと木星表面の縞模様や大赤斑も観察でき、さらに面白くなります。
2017年8月ごろまでに起こる、木星と月との接近などは、以下のとおりです。このうち月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。
日付 | 現象 | 備考 |
---|---|---|
〜4月上旬 | スピカと並ぶ | 最接近2月2日ごろ |
3月14日 | 月(月齢16)と接近 | 宵から翌日明け方 |
4月 8日 | 衝 (しょう) | 太陽の正反対に来る (深夜に南に見える) |
4月10日 | 月(月齢14)と接近 | 夕方から翌日明け方 |
5月 7日 | 月(月齢11)と接近 | 夕方から翌日未明 |
6月 4日 | 月(月齢10)と並ぶ | 夕方から翌日未明 |
6月10日 | 留 (りゅう) | この日を境に、天球上を西→東に動くようになる |
7月 1日 | 月(月齢7、上弦)と接近 | 夕方から深夜 |
7月 4日 | 東矩 (とうく) | 太陽から90度東に離れる (日没のころ南に見える) 黄道座標系では6日 |
7月29日 | 月(月齢6)と並ぶ | 夕方から宵 |
8月下旬〜 | スピカと並ぶ | 最接近9月12日ごろ |
8月25日 | 細い月(月齢4)と接近 | 夕方〜宵 |
木星は、9月上旬以降は太陽に近づいて見えにくくなり、10月下旬に合(太陽と同じ方向になること)を迎えて見えなくなります。その後は12月上旬ごろから、明け方の東天に見えるようになります。
木星には60個以上の衛星が見つかっています。そのうちイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストは大型の衛星で、双眼鏡や小型望遠鏡でも存在がわかります。1610年にガリレオが発見したことから、この4つはとくにガリレオ衛星とも呼ばれています。
ガリレオ衛星のうち、一番木星に近いイオはわずか2日弱で木星の周りを一回りします。一番外側のカリストも一回りするには約17日ほどしかかかりません。このため、ガリレオ衛星の位置は目まぐるしく変化します。木星の裏に回ったり木星の影に入ったりして、見えなくなっていることもあります。
衛星の動きをシミュレーション動画にしたので、観察の際の参考にしてください(I:イオ/II:エウロパ/III:ガニメデ/IV:カリスト)。図は上が北になっています。天体望遠鏡では像が回転していることが多いので見比べるときには注意しましょう。
天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、木星の見え方やガリレオ衛星の位置などを正確にシミュレーションできます。観測や撮影に便利です。
ステラナビゲータ活用法はこちら ›› ステラナビゲータで木星をシミュレーション
(2015年の例ですが、2017年にも応用できます)
アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡や双眼鏡を多数取り扱っています。縞模様や衛星の動きを、自分の目で観察してみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズや、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。
8月8日未明の部分月食のほか、アルデバランやレグルスが月に隠される恒星食、環が大きく開いた土星、……2017年には木星のほかにも興味深い天文現象や天体がたくさんあります。もちろん、日々の星々や月の満ち欠けなども楽しみです。
「アストロガイド 星空年鑑 2017」ではそんな見どころや季節の星座を、書籍とDVD番組で詳しく紹介。さらに付属の天文シミュレーションソフトで、現象の見え方や時刻などを調べることもできます。
「アストロガイド 星空年鑑」で、2017年の天文現象を予習したり観測計画を立てたりしてみましょう。
木星は大きさ(赤道部分の直径)が地球の約11倍、質量が地球の約320倍ある、太陽系の惑星の中で最大の天体です。主成分は水素やヘリウムといった気体で、巨大ガス惑星に分類されます。また、約10時間で自転しており、これは太陽系の惑星の中で最速です。
特徴的な表面の模様は、木星の雲を見ているものです。雲は主にアンモニアやその化合物でできていますが、少量の他の物質が太陽光と反応することでオレンジ色に見えます。明るい部分(帯)は上昇気流の部分、暗い部分(縞)は下降気流の部分で、その中に見える大赤斑や白斑は木星の嵐です。まれに、木星に小天体が衝突し、その痕跡の模様が地上や宇宙望遠鏡で観測されることもあります。
また、非常に強い磁場を持っているため、北極や南極の周辺でオーロラが発生することもあります。
木星の公転周期は約12年です。したがって、地球から見ているとおよそ1年ごとに、星占いの星座を1つずつ進んでいくということになります。干支の12年で空を一巡することから、中国では「歳星(さいせい)」とも呼ばれます。
1970年代に「パイオニア計画」や「ボイジャー計画」によって探査機が木星に接近し、表面の詳細な観測や環の発見、新たな衛星の発見などの成果を挙げました。
1989年に打ち上げられた探査機「ガリレオ」は、史上初めて木星を周回しながら観測を行いました。ガリレオは1995年から2003年にかけて木星やその衛星を観測し、数々の美しい画像や科学データをもたらしました。また、土星探査機「カッシーニ」や冥王星・太陽系外縁天体探査機「ニューホライズンズ」も、それぞれのメインターゲットへと向かう途中に木星を観測しています。
現在は探査機「ジュノー」が木星を周回しています。ジュノーはとくに、地球からはほとんど見えない木星の両極域を重点的に調べることを目的としています。
また、ハッブル宇宙望遠鏡によって衛星エウロパに間欠泉らしいものがとらえられたり、日本の科学衛星「ひさき」が木星磁気圏の観測を行ったりするなど、地上の天体望遠鏡や地球周回の衛星からの観測も活発に行われています。