西表石垣国立公園、日本初の「星空保護区」に認定
【2018年4月5日 国際ダークスカイ協会東京支部/IDA】
1988年に設立された国際ダークスカイ協会(IDA)は、天文関係者を中心に照明技術者、環境学者、法律家など様々な分野の人材が集まり、「光害(ひかりがい)」に対する観測的研究・技術的研究・啓発・条例制定といった積極的な活動を展開しているNPO団体だ。
同協会は2001年から、暗く美しい夜空を保護・保存するための優れた取り組みを称える「星空保護区認定制度」を開始している。保護区には「ダークスカイ・パーク」、「ダークスカイ・コミュニティ」など5つのカテゴリーがあり、現時点で約100か所が認定されている。認定を受けるには、光害がない暗い夜空であることだけでなく、屋外照明に関する厳格な基準や、地域における光害に関する教育啓発活動など、様々な条件を満たすことが求められる場合もある。
このたび、沖縄県の西表石垣国立公園が、日本初の星空保護区(「ダークスカイ・パーク」カテゴリー)に認定された。アジア地域としては韓国の「英陽ホタルエコパーク」、イスラエルの「ラモン・クレーター」(いずれもダークスカイ・パーク)に次いで3か所目となる。
「日本初となる星空保護区を発表できることを、大変うれしく思います。暗い夜空の価値に対する日本の方々の意識が高まっているという重要なサインであり、同じような保護区がアジアでさらに広がっていくことを期待しています」(IDAエグゼクティブ・ディレクター J. Scott Feierabendさん)。
「日本は世界の中でも特に夜が明るい国の一つです。今回の認定によって、日本の多くの人々が明るすぎることの問題点に気づき、また自然の夜空の美しさ・自然の暗闇の大切さを再認識するきっかけになってほしいと思います」(IDA東京支部代表、東洋大学准教授 越智信彰さん)。
日本の南端、八重山諸島に位置する西表石垣国立公園は、西表島や石垣島などの複数の島々と周辺海域にまたがっており、亜熱帯特有の自然景観が広がっている。サンゴ礁に囲まれた島々には、数多くの希少な動植物が生息し、その中には自然のままの暗闇を必要としている「ヤエヤマヒメボタル」(八重山の固有種)も含まれている。
石垣市と竹富町の2つの自治体から成る八重山諸島では、約5.4万人の人々が生活を営んでおり、西表石垣国立公園内は非常に暗い夜空が保たれているものの、居住地域からの人工光は大きな課題となっている。そのためIDAは、同公園の保護区認定を暫定的なものと発表している。
星空保護区の審査過程で、地元自治体は自治体管理の全ての屋外照明について、光害を抑えるための「屋外照明管理計画」に準拠することを約束した。今回の暫定認定の取得により、照明管理のための予算確保や改修作業がスムーズに進むことが期待されている。
また、屋外照明の改修は、観光業に大きく依存する島々の夜間環境の改善にも貢献するとみられている。国立公園内での星空観賞をツアーに組み込んだアストロ・ツーリズムが盛んになりつつあり、その観点からも暗い夜空の重要性が指摘されている。「八重山諸島の星空が、国際的に認められたことは大変光栄です。日本初の星空保護区として、人の暮らしと星空や夜の生態系が共存する街づくりをリードし、暗い夜空の価値を国内外に発信できればと思います」(星空ツーリズム株式会社 代表取締役 上野貴弘さん)。
〈参照〉
- 国際ダークスカイ協会 東京支部(IDA東京):日本初の「星空保護区」が誕生
- IDA:First International Dark Sky Place Established In Japan
〈関連リンク〉
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