遠方での暗黒銀河の候補を6個発見
【2018年5月29日 スイス連邦工科大学チューリッヒ校】
宇宙の中で銀河が生まれる過程については、ここ半世紀以上の間に理解がかなり進んできた。しかし、「銀河間物質」と呼ばれる希薄なガスから恒星の集団が生まれる正確なプロセスがどのようなものであるかはいまだ解明されておらず、大きな問題として残されている。最近の理論モデルから示唆される一つの説として、大量のガスは存在しているが星はまだほとんど生み出されない、という時期が銀河形成の初めのころに存在する、という考え方がある。
しかし、そのような「暗黒期」の銀河(暗黒銀河)は可視光線をあまり放射することがないため、今のところその存在を直接証明することはできていない。もし観測で暗黒銀河が見つかれば、銀河の進化を考える上での重要な空白を埋めるものとなる。
このような中、スイス連邦工科大学チューリッヒ校のRaffaella Anna MarinoさんとSebastiano Cantalupoさんたちの研究チームは、これまでにない効率のよい手法で暗黒銀河の候補探しを行った。
観測のターゲットである暗黒銀河の暗さという問題を克服するため、研究チームは暗黒銀河を探す「懐中電灯」としてクエーサーを利用した。クエーサーが放射する強い紫外線は水素原子を発光させ、そのスペクトルに「ライマンα線」という輝線が現れる。そのため、クエーサーの近くに暗黒銀河があると、暗黒銀河に含まれる水素からライマンα輝線が多く出て、目に見えるようになるのだ。
このような物質の「蛍光」とも言える輝線スペクトルはこれまでにも暗黒銀河探しに利用されてきたが、これまでの観測は、特定のフィルターを必要とする比較的狭い波長域でしか行われていなかった。今回Marinoさんたちは、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTに搭載されている分光器MUSEを使い、過去の観測に比べてより遠方のクエーサーの周辺を広い波長域で探索した。
全波長域で天体のスペクトルを取得することにより、観測した天体が暗黒銀河候補かどうかを効率的に判別できる。複数のクエーサーの周辺を10時間ずつかけて観測した結果、ライマンα線を放射する天体として当初見つけた約200個のうち、6個は通常の星形成が起こっている恒星集団ではないという結論になった。この6個は約120億年前よりも過去の初期宇宙(遠方宇宙)に存在しており、暗黒銀河の有力な候補となる。
〈参照〉
- ETZ Zürich:Lightening up dark galaxies
- The Astrophysical Journal:Dark Galaxy Candidates at Redshift ~3.5 Detected with MUSE 論文
〈関連リンク〉
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