火星探査車オポチュニティが音信不通

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NASAの探査車「オポチュニティ」は、5月31日ごろに発生した火星の砂嵐の影響で電力が急低下しており、現在は応答がない状態に陥っている。

【2018年6月19日 NASA

5月31日ごろ、火星で大規模なダストストーム(砂嵐)が発生した(参照:「火星で大規模なダストストームが発生中」)。その影響が、NASAの火星探査車「オポチュニティ」にも及んでいる。

火星における全球規模のダストストームの発生は、決して驚くような現象ではないものの、頻繁に起こることでもない。火星の南半球が夏の期間、太陽光が塵の粒子を暖めて、粒子を大気中のより高度の高いところへ押し上げ、風を発生させる。その風によってさらに多くの塵が舞い上がり、結果的にダストストームが大きく成長する。

今回のダストストームは発生から数日のうちに大規模化し、オポチュニティの現在地点である「パーサヴィアランス谷(Perseverance Valley)」を含む、1800万平方km以上の範囲にまで広がった。ダストストームによる塵の影響で大気の不透明度が増したため、オポチュニティの太陽電池パネルへと届く光の量が激減し、探査車の充電量が6月6日ごろまでに急低下してしまった。

6月6日時点の火星の全球マップ
NASAの火星周回探査機「マーズ・リコナサンス・オービター」の観測から作られた、6月6日時点の火星の全球マップ。画像中央の青い点が「オポチュニティ」のおおよその位置(提供:NASA/JPL-Caltech/TAMU)

さらにその後もダストストームは成長を続け、12日ごろの時点では火星の表面の4分の1にあたる3500万平方kmもの範囲に広がっている。ダストストームの悪化にもかかわらず、オポチュニティからは10日に応答があった。しかし、13日に再びオポチュニティとの通信を試みたところ、応答はなかった。

オポチュニティの運用チームでは、オポチュニティは電圧が下がったために「低電力モード」に入ったと考えている。その場合、探査車は定期的にコンピューターを起動させて電力量を確認するための「ミッションクロック」を除いて、すべてのサブシステムを停止している。

2004年1月に火星に着陸したオポチュニティがダストストームに遭遇するのは、今回が初めてではない。2007年にも同様の事態が発生しており、そのときには約2週間にわたって探査車の稼働状態が制限され、消費電力節減のために数日間地上との通信も控えられた。

大気の不透明度のレベルは、2007年には5.5程度(下のシミュレーション画像の左から3枚目程度)だったのに対して、現在オポチュニティが見舞われているレベルは10.8(画像の一番右)と推定されている。

塵の影響で不透明度が増す火星の空のシミュレーション
大気中の塵の影響で徐々に不透明度が増す火星の空のシミュレーション画像。一番右が今年6月10日ごろの様子(提供:NASA/JPL-Caltech/TAMU)

大量の塵に阻まれる状態はしばらく続くことが予想され、少なくとも近いうちに充電が開始されるとは考えにくそうだ。運用チームでは、当面の間オポチュニティの電力量の監視を続ける。

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