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彗星のいる風景〜歴代彗星ギャラリー

新発見や回帰のものも含めて、いまや年間20個の彗星が観測される時代になっている。しかし、風景のなかで眺められる大彗星の数は今も昔も変わらない。1965年の池谷・関彗星以来、およそ40年の間に登場した大彗星の姿を紹介しよう。

写真・文:藤井 旭

1965 秋

天文ブームの火付け役

池谷・関彗星(1965 S1)

1965年秋、静岡県の池谷薫さんと高知県の関勉さんの二人が発見したクロイツ群の大彗星。10月21日の近日点通過時には、白昼、小望遠鏡でも太陽のすぐそばを動いていく姿が見えた。その後、夜明け前の東の空に長大な尾を引いて現われ、当時の若い天文ファンたちを熱狂させ、以後、多数の日本人コメットハンターたちが活躍する原動力となった。頭部の明るさは4等級で、尾もからす座からコップ座に伸びるくらいものだったが、当時の夜空は暗く澄み、肉眼でもその勇姿が感動的だった。カラーフィルムの感度はまだASA(ISO)50、当時の彗星撮影はモノクロASA(ISO)400のトライXによる固定撮影が主流で、天体写真ブームのきっかけにもなった。

池谷・関彗星の写真

1965年11月4日

撮影地:白河天体観測所

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1970 春

20世紀でもっとも明るかった

ベネット彗星(1969 Y1)

南アフリカのアマチュア天文家J.C.ベネットさんが1969年12月28日に発見した新彗星で、発見時の光度は10等だったが、翌1970年3月20日の近日点通過のころには-3等に達し、20世紀の中ではもっとも輝いた彗星と称されるほどの肉眼大彗星になった。尾の長さは20度と明るいわりには長くはなかったが、太く曲がった尾とまっすぐ伸びた尾の2本がV字形に開いた姿が、夜明け前の東の空にかなり長時間にわたって見えた。このころには小型カメラによるカラーフィルムでの撮影が主流になっていて、その勇姿を捉えた天文ファンも多かった。

ベネット彗星の写真

1970年4月4日

撮影地:白河天体観測所

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1974 春

期待外れに終った

コホーテク彗星(1973 E1)

1970年代に入ると天文情報も増え、彗星の予想光度などが、一般のマスコミなどでも大きく取り上げられることになった。1973年に発見されたコホーテク彗星も近日点のころには、マイナス光度の大彗星となることが予想され大きな話題となったが、結局、1974年の冬の西空であまり明るくならなかった。同じように、1990年春のオースチン彗星(1989X1)も期待を大きく下回る明るさにとどまったが、彗星の明るさの予想のむずかしさを知る例となった。

コホーテク彗星の写真

1974年1月13日

撮影地:白河天体観測所

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1976 春

20世紀でもっとも美しい大彗星

ウェスト彗星(1975 V1)

1975年9月24日、南米チリの欧州南天天文台の口径1mシュミット望遠鏡で撮影した写真のなかに、R.ウェストが発見した新彗星は、翌年3月には−2等、尾の長さ30度という大彗星に成長。見るものを圧倒するほどの美しさとなって、夜明け前の東の空に登場した。核が4個に分裂したため、大量のチリが放出され、シンクロニックバンドと呼ばれる無数の筋が鮮やかに見えたのも印象的だった。近日点通過は1976年2月25日。

ウェスト彗星の写真

1976年3月5日

撮影地:白河天体観測所

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1986 春

76年でめぐるもっとも有名な周期彗星

1P/ハレー彗星

彗星といえば誰もがすぐその名を思い浮かべるほど有名な周期彗星で、約76年ごとに出現しては、歴史上にさまざまなエピソードを残し続けてきたことで知られる。その名はグリニッジ天文台長で76年周期を予言して的中させたE.ハレーに由来する。1910年の回帰のときには、全天を横切るほどの長大な尾が見られたが、1986年のときには条件が整わず、南半球で3等級の姿としてしか見えず“ハレー彗星ブーム”の騒動ほどには姿はさえなかった。一方でESAのハレー探査機ジオットがその核を初めて撮影するなど科学的な成果が大きかった。次回は2061年夏、北の空に1等級で見える。

ハレー彗星の写真

1986年3月5日

撮影地:オーストラリア

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1996 春

最長の尾を見せてくれた

百武彗星(1996 B2)

鹿児島県のコメットハンター百武裕司さんが発見した新彗星で、急速に地球に接近、尾の長さが100度近くに達する大彗星となって人びとを驚かせたことは、まだ記憶に新しい。彗星本体の大きさは並のサイズだったが、地球に接近したため大彗星となって見えた例である。

百武彗星の写真

1996年3月25日

撮影地:白河天体観測所

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1997 春

長期間明るかった

ヘール・ボップ彗星(1995 O1)

アメリカの二人のアマチュア天文家、A・ヘールさんとT・ボップさんによって、1995年7月24日にいて座の球状星団M70の近くで発見されたもので、2年後に大彗星になることが早くから予想された珍しい例となった。地球にはあまり接近しなかったが彗星本体が大きく、約3か月以上にわたって肉眼で楽に見え、しかも、夕空と夜明け前の1日に2回も見ることができた。

ヘール・ボップ彗星の写真

1997年3月19日

撮影地:福島県安達太郎山

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星ナビ2003年11月号に掲載された記事を一部編集して制作しました。

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