今年は、人類初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げから50年目という節目の年だ。神戸市には、スプートニク1号の打ち上げに因んだ「人工衛星饅頭」なるものがある。一体どんなものかというと「人工衛星饅頭」は商品名で、その正体は大判焼きだ。小麦粉と卵と砂糖でできた生地を鉄製の型で焼いて中にあんこが入っているアレだ。スプートニク1号の打ち上げの年にお店ができたため、なにか売れそうな名前をということで、人工衛星という名前がつけられたようだ。(※写真に写っているのは東京で買った大判焼き。)
スプートニク同様50周年を迎える「人工衛星饅頭」は今も健在。お店の名前は「大吉屋」(神戸市兵庫区上沢通1-1、市営地下鉄 湊川公園駅下車)、人工衛星饅頭と書かれた赤いのれんが目印だ。饅頭の値段は1個60円とかなり安い。残念ながら地方発送はないので、ぜひ神戸へ行く機会には足を運んで、饅頭をほおばりつつ、宇宙開発の歴史を振り返ってみてほしい。
ところで、大判焼きの呼び名は地域によってかなりのバリエーションがある。今川焼き、太鼓焼き、どんどん焼き、回転饅頭、円盤焼き、大判焼き、甘太郎焼き、ずぼら焼き、満月焼きなど、あげていったらきりがないくらいだ。その中で気になったのが「ロケット焼き」。本当のところは定かではないが、大判焼き風のものを「ロケット焼き」と称して販売している店が淡路島にあるらしい。理由は、販売を始めたころ、ロケットがよく打ち上げられていたから?という。しかし、この「ロケット焼き」という名前、大判焼きにとどまらない。種子島にあるお好み焼き屋のメニューにその名が登場している。そして、その名の由来は”由緒正しい”というべきものなのだ。
種子島といえば、種子島宇宙センター。種子島にあるお好み焼き屋「安兵衛」(熊毛郡南種子町中之上 2769、TEL 0997-26-1401)にも当然ロケットの打ち上げ関係者が訪れる。その関係者の中に(当時の宇宙開発事業団(NASDA)副理事長)五代富文氏(ごだいとみふみ)がおられたのだ。五代氏といえば、日本初の純国産ロケットの開発に当初から関わったH-IIの生みの親ともいうべき方。五代氏から「何か宇宙をイメージするものを店で出してみたら?種子島の特色を出すために特産の伊勢えびとかナガメを使った”ロケット焼き”というのはどうか」と提案があったそうだ。店ではご本人の許可をいただき早速「ロケット焼き」(広島焼き)としてメニューに加えた。残念ながら700円のロケット焼きに、伊勢えびもナガメも使用できなかった。その代わりに、「ロケット焼き」の真ん中には生卵が入れられ、周辺には星をイメージするゴマが散らされているそうだ。また、満天焼きというのもあって、そちらは表面にマヨネーズで星が描かれているそうだ。
種子島宇宙センターでは、国際宇宙ステーションに届けられる「きぼう」日本実験棟(JEM)の実物大モデルも展示されているほか、打上げやエンジン燃焼試験日以外は、自由に発射場の様子を見学することができるので、まだ訪れたことがない人はぜひ!なお、その際は「ロケット焼き」をお忘れなく!