すばる開眼! ファーストライト画像発表される
【1999年1月29日 文部省記者発表室】
日本がハワイに建設中の「すばる望遠鏡」が、構想から数えるとほぼ20年、計画が正式にスタートしてから9年の月日を経て、開眼のときを迎えた。
「すばる望遠鏡」は、ハワイ・マウナケア山頂(標高4205メートル)に文部省・国立天文台が建設中の新大型望遠鏡で、口径8.2メートル、一枚鏡としては世界一、総合的な観測性能としても世界一を誇るものだ。
98年12月24日に、天空の光を初めて望遠鏡に入れる「エンジニアリング・ファーストライト」が実現され、99年1月4日に、じっさいの観測装置を取り付けての「アストロノミカル・ファーストライト」が実現された。
こうして、望遠鏡の基本性能を確認する過程で得られた天体画像の中から厳選されたものが、本日(1月29日)国立天文台より発表された。
なお、すばる望遠鏡のより詳しい内容は国立天文台のホームページ(http://www.nao.ac.jp/index_J.html)にある。また、『スカイウオッチャー3月号(2月5日発売予定)』でも詳しく取り上げる。
すばる望遠鏡・ファーストライト画像集
なお、各画像にリンクされている大きな画像は、国立天文台発表のものより画質を落とし、ファイルサイズを小さくしてある。(画像提供/文部省国立天文台)
Cl 0939+47 (Abell 851)
50億光年以上遠くまで見通せる領域のごくせまい部分を捉えた画像。これほど遠くになると、銀河形成のごく初期の姿を捉えていることになり、いろいろなタイプの銀河の進化モデルを考えるうえで貴重なデータが多く得られるはずだ。
Hickson Compact Group 40
この画像は、5個の銀河が密集して形づくる銀河集団であり、H.アープの特異銀河カタログにも掲載されている(別名Arp321)。赤外線の1.25ミクロン帯、1.65ミクロン帯、2.15ミクロン帯をそれぞれ青、緑、赤に見立てた疑似カラー合成画像。この銀河集団よりもっと遠方にある背景の銀河は小さくかつ赤い色で見えている。
アンドロメダ大銀河(M31)の部分アップ
約230万光年という宇宙のスケールではごくごく近くにあるM31(アンドロメダ大銀河)の画像。すばるの解像力により、銀河の部分アップを捉え、個々の恒星に分解して撮像することができる。こうした画像により、M31中の星雲・星団や恒星の進化を直接調べることができるだろう。
NGC4051
おおぐま座にある形外銀河NGC4051。光度10.3等、セイファート1型の銀河で、腕の中に存在する星生成領域まで見ることができる。
Orion KL
オリオン座の方向は太陽系の外側にある、銀河系の腕の中の巨大な星生成領域にあたり、多くの散光星雲がある。この画像は星間ガスの濃密部分から星が今まさに誕生している領域を映し出したもの。中心に太陽の30倍の質量を持つ原始星が存在している。
オリオン大星雲の部分アップ
このオリオン大星雲はカラー画像のように見えるが、じつは赤外線で撮像されたもの。波長1.25ミクロン帯、2.15ミクロン帯、2.12ミクロン帯(水素分子の発光だけを抽出)の画像を、それぞれ青、緑、赤の光に対応させて合成疑似カラー画像にしたもので、星生成領域の淡い、微細な構造がシャープに写し出されている。
PG1115+080(重力レンズ効果)
アインシュタインの重力レンズ効果を捉えたもの。中心にある天体の重力によって、背景にある遠方の天体の光が曲げられて、見えている。手前にあるのは30億光年の銀河で、奥にあるのが100億光年のクエーサーである。
もっとも遠いクエーサー(z = 5.0)
この画像は、現在確認されているもっとも遠方のクエーサー(赤方偏移が 5.0、すなわち宇宙の年齢が150億年とすると、宇宙がビッグバンで誕生してから10億年ちょっとしか経っていないクエーサーからの光を受けていることになる)と、その周辺を撮像したもの。
木星と土星
青・緑・赤の三色をそれぞれのフィルターを通して短時間露出し、コンピュータ上でカラー写真に合成した木星と土星の画像。絵の美しさを堪能してほしい、という意図でファーストライト画像に含めたものだという。「この像はアンシャープマスキングなどの空間フィルター類を用いた画像処理をいっさい行なっていない文字どおりすばるのナマ画像である」という。すばるの光学系のすばらしさがわかる。
土星
すばる望遠鏡で撮られた土星。シーイングの安定したマウナケア山頂というロケーションと、世界トップクラスの分解能を持つすばるの能動光学系の素晴らしさをもってすると、土星表面の詳細なようすがわかる。